富裕層インバウンドの本質

注目

富裕層インバウンド誘致で地域活性化

世界で一番富裕層の方々が多く存在するアメリカ・ビバリーヒルズから発祥、数字のデータ・統計や理論以上に実体験を重視して構築されたビジネススタイルです。近年日本ではアフターコロナということでインバウンドにかなり力を注いでます。

富裕層インバウンドにこだわる理由は訪日されたセレブリティがインフルエンサーになるのです。その究極のインフルエンサーとは国王や大統領などの要人です。

弊社が富裕層をインバウンドのターゲットとする理由について、観光消費額の平均単価が高いということはもちろんですが、それだけではありません。

旅行業界に限らず、富裕層の間で「良い」と認められたものはマス層(大衆)の憧れになる傾向があります。

このようなセレブリティに認められたブランド、そして流行したトレンドは「憧れ」となり、すべての人に影響・波及し得るのです。このように新しい価値観の醸成を促すことで、観光産業全体の押し上げを図ることも、富裕層インバウンド活性化への取り組みです。

日本政府観光局(JNTO)の調査によりますと、富裕層旅行者がひとりで一般旅行者の約9倍の経済効果が見込めるというデータが出ております。

成功事例として代表例が北海道ニセコ町、次いで洞爺湖や伊勢志摩など各国首脳陣によるサミットが掲げられます。ただサミットのような一過性のあるイベントだけではコンスタントに誘致することは難しいかと思われます。

現実問題として、首都圏や近畿圏以外の地方でのインバウンド事業が進まない原因と主に二つ掲げられます。

1.インフラの整備

最近のインフラの定義とは公共交通機関や電気、ガス、水道だけではなく、レストランやホテル、最近ではコーヒーショップもインフラの定義の一つとして世の中は捉えているのです。

近年、東京の地下鉄の改札の中にスターバックスなど大手コーヒーチェーンが入っていますね。とある地方都市でもJRの駅や道後温泉駅にもコーヒーショップチェーンが入っています。

東京から新幹線で約1時間の長野県軽井沢町は、19世紀末からの高原リゾート都市であり、歴史ある避暑地・別荘地として知られています。

「軽井沢」が繁栄している理由は、北陸新幹線停車駅設置や高速道路、高級ホテルやレストラン、スーパーなど首都圏に住んでいる富裕層に対してインフラが充実されているからだと思われます。

北陸新幹線が長野から石川県金沢市まで延伸された際、速達の新幹線「かがやき号」が全列車軽井沢駅を通過するニュースが流れた時、住民の方は軽井沢衰退の危機感を感じたとのことです。

町おこしや村おこしをすることはとても重要です。

しかし多くの人を誘致させるにはインフラの整備を行わない限りおしゃれなカフェを作ったし、ゆるキャラでアピールしても結局狭いパイの中の奪い合いにしか過ぎず、予算を大量にかけて投資しても本末転倒となりかねません。人口減少は日本全国的に起こっております。

2.海外旅行を含めた外国人と接する機会が少ない日本人の価値観を推し進める。

日本に来たなら寿司や刺身を食べなさいと外国人旅行者に強要する傾向があります。

一例としてトルコのサバサンドの付け合わせとして濃いピンク色した飲み物は「トゥルシュ」。トルコの街中やレストランで見かける色鮮やかな飲み物です。砂糖は使われずに大量の塩と酢で作られるので味はとても刺激的で好みがハッキリ分かれます。

トルコで食べられる酢漬けの野菜(ピクルス)なので、もちろん汁も飲みます。はじめはジュースと思っていたのですが、きゅうりやナス、セロリ等の野菜が入っています。

トルコに限ったことではないのですが、地域の名物料理を誰ものが受け入れられるはずがありません。

フランスでしたら「山羊のチーズ」など、味の好みがハッキリ分かれるものが存在します。

「どうしたら受け入れられるだろうか、、、」

富裕層含めてインバウンドに携わる以上、日本人はもっと海外で出て様々な創意工夫を積み重ねるのが本筋です。

本来なら富裕層含めてインバウンドに携わる以上、日本人はもっと海外で出て様々な創意工夫を積み重ねるのが本筋です。

ご存じのように歌劇やお祭りなどの様々な文化が充実し、日本産の食材も豊富。さらに日本語だけで夥しい文献や情報にもアクセスできるなど日本語や日本食ですべてが事足りて、わざわざ不便な海外に出ようとしないのが現状です。

特に日本の歴史と和食を強要している傾向があり、彼らの国籍や環境、価値観や考え方などライフスタイルを理解しないと事は進みません。

観光は経済に直結する分野です。

人との往来が増えることで、経済関係もより強くなることはご承知かと思われます。

富裕層インバウンドに成功を収めた海外企業の成功事例をもとに具現化に向けていく地方自治体様の一助となれば幸いです。

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1.欧米の旅行マーケット

  1. 概要
  2. フロリダとラスベガスの違い
  3. 航空業界の規制緩和とクルーズ
  4. ハリウッドの新しい旅行スタイル
  5. 業界に革命を起こしたクルーズ
  6. クルーズ客船は洋上の都市
  7. 旅行決済システムの簡素化
  8. アメリカクルーズ事情
  9. イギリスのクルーズ市場

2.投資家旅行家・パーマネントトラベラーの視点

  1. 旅行需要の回復に向けて
  2. 富裕層インバウンド方向性
  3. ラグジュアリートラベラーが求めるもの
  4. ウェルネスは富裕層インバウンドの理想

3.富裕層ビジネスのオピニオンリーダー「ザ・リッツ・カールトン」

  1. ザ・リッツ・カールトンとクリスタルクルーズの共通点
  2. リッツ・カールトンヨット処女航海
  3. ザ・リッツ・カールトンヨットコレクションがデビュー

4.日本食を全世界に広めたセレブリティ「NOBU」

  1. ユダヤ人富裕層に不評の日本食を改善
  2. 船上日本食レストランへの挑戦
  3. 和食のカリスマ「NOBU」を船上に
  4. 世界のNOBUの味が洋上で味わえる

5.ラグジュアリークルーズは富裕層インバウンド事業の要

  1. ラグジュアリークルーズとは
  2. クルーズの本質
  3. クリスタルクルーズに注目する理由
  4. 世界で通用するクルーズ会社を構築
  5. ユダヤ系富裕層の乗客との出会い
  6. クルーズ業界の評論家の見解
  7. 日米クルーズ価値観の相違
  8. ゲストのライフスタイル
  9. 難関米国ラグジュアリーマーケット
  10. ラグジュアリークルーズの世界基準
  11. ラグジュアリークルーズの黄金律.1
  12. ラグジュアリークルーズの黄金律.2
  13. クルーズの主役はゲスト
  14. クリスタルクルーズの幕開け
  15. 完璧な船上環境を目指して
  16. ゲストとクルーの相性が肝心
  17. クルーズ客船事業は社会心理学
  18. リピータービジネスを支えるクルー
  19. 世界最高「ファイブスター・プラス」獲得
  20. 企業の永続的な成功をもたらす7つの方法
  21. ラグジュアリークルーズの最高級ブランド.1
  22. ラグジュアリークルーズの最高級ブランド.2
  23. クルーズの究極の在り方9か条
  24. クルーズ客船事業は社会心理学
  25. ブランド創りと同業他社との差別化
  26. ーケットに聞く最適人材の相性とは
  27. ラグジュアリークルーズに対する日本人のバイアス

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ミシュラン三ツ星「ミッシェルブラス」in 北海道

孤高の料理人とも呼ばれるミッシェル・ブラスの世界。

コロナ禍前まで北海道ウインザーホテル洞爺にフランス国外の唯一の支店であったフランス内陸部オーブラック地方ライオール村に店を構える「ミシェル・ブラス」の料理をご紹介します。

自然豊かなこの村から生まれた料理は、フランス料理の世界でも非常に高い評価を得ています。その唯一の支店が、この日本の中でも豊かな自然を有する北海道の洞爺湖にありました。

ライオールオリジナルのカトラリーはずっしりと重いです。食べている途中はお皿にフランス語で書かれたメッセージが添えられています。スタッフの方が説明してくれます。

ミシェルブラスはソムリエナイフで有名なライオール村の出身。

ライオール村では、ナイフは一生に一本、質の良いナイフを子どもの頃から手入れを行い、一生使い続けるのだそうです。

そのライオール村でのしきたりとして、「マイナイフ」を持ち、それを生涯大事に使い続けるという伝統があるそうです。

ライオール村にある本店でもナイフ1本だけは全ての料理最後まで使い通します。

その伝統に従って「ナイフだけは最後まで使って頂けませんか?」とサービスされる方がおっしゃってました。

食べ終わったときに、「ナイフはパンでぬぐってください」と。ファークやスプーンはその都度替えてくれます。

ミッシェルブラスのフランス本店にあるオーブラック高原のハーブ「シストル」。ミシェルブラスのシンボルマークがバターにもあります。

【アミューズ】 1品目。コックームイエット。ミシェル・ブラス氏が子供の頃、母親が作ってくれた丁度よい湯で加減の半熟卵を食べるのが素朴な楽しみだったと詳しく書かれたエッセイが渡されます。粋な演出です。

2皿目がセップ茸のタルト、3品目は蝦夷鹿のコンソメのジュレなど一口ずつスプーンに盛られた色鮮やかな前菜です。

北海道グリーンアスパラのロースト、ハーブと卵のヴィネグレット、ゴマ塩、洞爺湖周辺の農家で採れた野菜。

ウド&ホッキ貝のポワレ、ニンニクのコンフィ&ピマンデスプレットで香りをつけて:”アイゴブリドー”のエミュルシオン、クルミオイル。

魚介料理として、ブルゴーニュ産エスカルゴのファルシ。ペティオニオンのポワレ、生ハムオイルとシブレット。春巻き見立ての料理ですが、中にはぎっしりとエスカルゴが入っていました。

メインディッシュの肉料理は知床から来た:鶏の胸肉、ナスとオレンジのピューレ。

「アリゴ」という目の前で、チーズとジャガイモをこねて伸ばしたライオール地方の郷土料理。元々はオーブラック地方の修道院が巡礼者にふるまった食べ物というのが始まりとのこと。ジャガイモのピュレと牛乳とバターとニンニクを加えて練り、糸を引くような状態に仕上げたものです。

チーズの盛り合わせ。ミシェル・ブラスの地元であるフランス産チーズが揃えられ、この中から好きなものを好きなだけ取り分けていただけます。

デザートはチョコレートムースとシャーベット。締めにエスプレッソ。

ミッシェルブラスのディナーを堪能し、翌日の朝はシャンパンブレックファーストです。朝からシャンパンなんて贅沢な気分にさせられます。

ミッシェルブラスでは食事だけでも最低3時間かかりますのでゆとりあるスケジュールでご来店されることをお勧めします。実際、私たち夫婦は19時に入店し、24時半までおりました。食事が済んだあとソムリエの方の計らいで「ミッシェルブラス」のワインセラーを見学させていただきました。まるでワインが眠っている冷蔵された倉庫みたいでした。ちなみにディナーの場合、ワイン込みでひとり40,000円程度の予算でした。

印象としては極めて個性的な料理と伺えます。万人受けではなく、玄人向けと言った感じでしょうか。

Michel Bras Toya Japon HPより

あいにくザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパでのフランス料理「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」は契約期間満了に伴い2020年4月30日(木)で閉店しましたので、今後はフランスの本店まで出向いて試してみたいと思います。

ワインが主役のレストラン「ビンテージルーム」

ラグジュアリークラス客船「クリスタル・セレニティ」(Crystal Serenity 68,000t)には世界中から選りすぐったワインの数々をゲストにより親しんでいただくために作られたワインが主役のレストラン「ビンテージルーム」(Vintage Room)があります。

ソムリエが選んだ6種類のワインとそれに見合った料理を総料理長が特別に用意されます。それではヴィンテージルームに揃っているワインの一部をご紹介します。

ブルゴーニュの宝石ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ リシュブール[1995](RICHE BOURG) 1995

ワイン愛飲家の間でこの名を知らない方はいないでしょう。その香りは『百の花を集めてきたような』と形容されるほど。味わいはフルボディーで、木苺、スパイス、トリュフの香り。

信じがたいような華やかさと官能的なまでの艶やかさが産まれます。口当たりはなめらかで、ビロードのような舌触りが残ります。

シャトー ディケム( Chateau d’Yquem ) 1999

世界最高の極甘口白ワインである貴腐ワインです。生産地はフランスのアキテーヌ地方ジロンド県ソーテルヌ村です。よいヴィンテージのものは熟成に二十年以上かかるとされ、1855年パリの万国博覧会の際、ジロンド県産白ワイン部門の格付けで、これを凌ぐものはない最高級品ということで唯一「特別1級」に指定されています。

シャトー・シュヴァル・ブラン(Chateau Cheval Blanc)1993

ボルドー最高峰のひとつでサンテミリオンが誇る最も偉大なワインのひとつです。サンテミリオン第一特別級(A)の飲み頃21年熟成。しかもアロマのワインと言われる1993年ものです。

2010年のオークションで304,375ドル(日本円に換算して約3,400万円)の値を付け、「ボルドーワインの価格の記録を更新した」とか。「ボルドーワインをひとつ選ぶなら“これ”と言う人も少なくない」と大絶賛のワインです。是非一度お試しください。

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エミレーツ航空 クルーズ業界に参入

2023年4月1日、アラブ首長国連邦、ドバイ – 航空会社の中でもQE2と呼ばれ、空と陸での豪華なサービスで世界中の多くの人々に愛されているエミレーツ航空が、新たに立ち上げた海上部門、エミレーツ・シーラインで7つの海を航海することになりました。

幸運なシップスポッターやクルーズ愛好家たちは、本日未明にドバイのパーム・ジュメイラ周辺を堂々と航行するファーストライナーの初海域試験を実施されました。

エミレーツ・シーラインは、めったに見ることのできない寄港地を巡りながら、クルーザーに最高級の、これまでにない体験を約束します。エミレーツ・シーライン社は、数十億ドル規模の大型クルーズ船10隻を発注し、現在、最新かつ最高の設備を導入しています。

エミレーツ・シーラインは、クルーズ業界における大きなギャップを認識し、慣習にとらわれず、従来の季節にとらわれないクルーズ・カレンダーを提供する予定です。最初のクルーズは2024年4月1日にドバイ港から出発する予定で、カラチが初寄港地となります(1985年10月の航空会社の初飛行にちなんでいます)。

旅程と予約は6月31日から開始されます。エミレーツ・シーラインの客船は、航空会社の巨大なネットワークに支えられ、アメリカからニュージーランドまで、主要なクルーズ港に停泊する予定です。

エミレーツ・シーラインの舵取り役として新たに任命されたチーフ・マリタイム・オフィサー、ジャック・シャロー船長は次のように述べています: 「エミレーツ航空は、ドバイのパワーボートレース、エミレーツ・チーム・ニュージーランドや、最近ではエミレーツ・グレート・ブリテン・セイルGPチームと関わりを持っており、海を身近に感じることができる存在です。世界中の都市が課題に係留されたままであるのに対し、ドバイは想像を絶するノットでスムーズに航海しており、クルーズやその他のマルチモーダル交通インフラも優れています。

“テクノロジー、AI、イノベーションを駆使した次世代クルーズ船の開発により、都市のペースを反映し、現在最速のクルーズ船のほぼ2倍となる時速50ノット以上で航行することができます。エミレーツ・シーラインは、船上での夢のような豪華さ、これまでにない旅程、一生に一度の体験を提供することに取り組んでいます。お客様との約束を確実に果たすために、私たちは厳正な運営を行います。現在、チームは総出で就航に向けた準備を進めています」。

エミレーツ・シーラインは、持続可能な海上燃料(SMF)、ソーラーパネル、リサイクル、廃棄物管理についてベンダーと協力し、海上での持続可能性に関して業界のペースを握ることになります。

エミレーツ航空のグローバルネットワークからドバイに到着した乗客は、DXBからドバイハーバーまで特注の電気自動車で移動し、船内の豪華なキャビンに案内され、空と海のシームレスな旅ができます。

船内には4種類のキャビンが用意され、様々なタイプのスペース、アメニティ、ラグジュアリーを提供します。商品・サービスの詳細については、今後発表される可能性があります。

エミレーツ・シーラインは今後数ヶ月の間に、多様なスキルと専門知識を持つ数千人の船員やスペシャリストを採用し、運航管理、航空会社ならではのおもてなしでお客様にサービスを提供し、ネットワーク全体の経済性をサポートする予定です。

ラグジュアリークルーズに対する日本人のバイアス

アメリカでのクルーズマーケット調査によると、米国の旅行代理店が考えるラグジュアリークルーズの基本概念は、船長や上級幹部船員とクルーズ船客の交流や社交をベースにしているのです。

「流暢な英語を操る、ヨーロッパ人幹部船員による接客」

当時のロイヤル・バイキング社やシーボーンクルーズ社の白人オンリーのイメージで、 それに見合うコストパフォーマンスとして、他社より高い料金を払うことでした。

クリスタルクルーズ社の課題として、高額のクルーズ代金を払ったのに、提供されたサービスの中に、予期しない過度の日本のエレメントが混じっていては困るのだと強く主張し出したのです。

このことは、この事業乗り出し時の過去の覆面調査でも指摘されていた模様です。創業前のクリスタルクルーズ社の調査によると、配船先は、まだ環太平洋クルーズを中心考えていたのです。

日本人幹部船員の積極的な登用は、彼らの許容範囲と思われていた)この業 界では、ラグジュアリークルーズ=ロイヤル・バイキング社の代名詞と思われるほどでした。そして同社はアメリカの旅行代理店からの支持は大きいものでした。

ラグジュアリークルーズを主に扱う旅行代理店の担当者の中心は、主に30〜40代の女性で、日本を含めてアジアの世界に最も遠い所にいるといわれたユダヤ系と言われていたのです。

また、西海岸に於ける旅行代 理店の中年女性には、家族の中に、太平洋戦争や朝鮮戦争との関わりがあった人たちが、クルーズ 旅行の販売に関わっていた。このプロジェクトに関􏰂し行った船客の反応をチェックの為の初期マーケット・リサーチ によれば、年配のアメリカ人船客や日本人船員の優秀さを知らないユダヤ人の客層にとっては、日本人の凛々しい制服姿は、残念ながら、ドイツ人軍人と同じように、映画 の「トラ・トラ・トラ」「パール・ハーバー」等の映画の世界の「太平洋」でした

日本人の発想では思いもよらないことですがアメリカ人にとって太平洋とは、硫黄島を含めて激戦地を思い起こさせるという厳しいコメントも少なからずあったのだ。

現実の例として、彼らが、ドイツのラグジュアリークルーズ客船「オイローパ」に、全く乗船しない。その理由として アメリカの販売網が、ドイツ船への誘客を拒否していたことも原因かと思われるのです。

送り込んだ船客が、リピ ーターになることはないと、経験的に知っていたし、彼らのコメントのなかには、ドイツ人船員の制服姿が、戦争を思い出させるものであるとの調査結果もあったのです。これは単に相手の感情やサブリミナルな意識の問題で、こちらではコントロールできない話だったのです。

クルーズ船客は、彼らの先入観や固定概念などが入り混じった「主観」で船を選ぶわけで、多分 背景には、有色人種に対する白人(特にユダヤ系)の優越感や当時も日系人強制収用などとの関連で注目を浴びていた太平洋戦争の不幸な歴史、彼らから見る日本人と他のアジア人との区別、日本人とフィリピン人の船員混乗など文化や習慣の違いもあります。

このことは、この事業乗り出し時の過 去の覆面調査でも指摘されていた。日本人の乗組員の努力にも拘らず、アメリカの旅行代理店が思う「

日本の乗組員は、貨物船しか知らないのではないのか?

と言う先入観を払拭するのは、 難しい課題でした。

このようなバイアス的な議論は、1980 年代後半のアメリカの政治・社会環境の過激な動向も 影響していた。当時、アメリカでは、ヒスパニックの増加や黒人問題を抱え、「外見・外姿」を見て、相手を無意識に差別することが、問題になっていた。

例えば、警察の初動対応に、マイノリティであると言う先入観が影響を与 えているなどといった、人種的プロファイリング が、人権運動の活発なアメリカ社会の大問題になっていたのです。このような大きな社会の 動向や世 論のうねりは、円高傾向をもとに、アメリカに進出してくる日系企業や日本人に対する見 方にも影響を与えていた。WASP などの白人社会(アングロ・サクソン系)や ユダヤ人社会とは異なった少数民族問題として捉えられることも多かったのです。

アメリカ議会では、日系議員などを中心として、戦時中の日系人の名誉回復運動が、クローズア ップされ、第二次世界大戦時の真珠湾攻撃の是非などとともに、この日系人問題が、特に西岸諸都市を中心に頻繁にマスコミで取り上げられていたのです。

1988 年、レーガン大統領は、戦時の「日系アメリカ人」に対しての偏見的・差別的な対応」と日系人「強制収用所」問題に関して、国家としての謝罪をすることを 表明した。彼の国家謝罪で、日系人に対する法的な復権の試みは、一応落着し た。 この表明は、真珠湾攻撃以来、アメリカの人たちの深層心理に流れていた、日系人 を「敵性 市民」として捉える「偏見」を払拭する効果があったといわれたのです。

その後も、覆面調査の手法などで、日諾高級船員の混乗なども含めた船上の滞在 環境などに関す るマーケット調査を何度も行った。その結果、彼らの偏見に満ちた ラグジュアリー・クルーズ客船 の本音を一言で言えば、以下に尽きたのです。

「ラグジュアリー・クルーズにおける高級幹部船員の採用 は、ロイヤル・バイキン グ社等のホワイト・シップの例を、ビジネスモデルを基本として検討」

「日諾混乗の発想は、運航会社の都合であって、彼らのマーケットを中心とした「売れる」 ビジネスモデルではない」

「娯楽指向型カリプ海の”ファン”・シップとラグジュア リー・クルーズ(長期滞在型)は性格が違うのです。長期滞在型のクルーズにとって最も大切な点は、船上における幹 部船員や船客との交流にあるのです。この点をクリスタル・クルーズ)は、どう考えているのか?」。

クルーズ事業は、滞在型の旅行であり、毎日顔を合わせ、そこに誰が働いているかが、大きな意味を持つのです。

当然文化や習慣の違いを通した主観や偏見もあります。

クリスタル・クルーズ社の考え方としては、この辺りの微妙な事情を勘案し、さまざまなプレイダウンな工夫を検討すべきであるとの PR 会社のアドバイスもあったのです。

船長やチー フ・エンジニア(機関長)をノルウェー人にし、ダイニングの客席のホストとなるキースタッフについても、マーケットやクルーズ船客個人の意向を受け入れた方が、好都合だったのです。

このようにアメリカは日本の単一民族ではなく、様々な人種が織り混ざって生活しているので、価値観や考え方が異なるのは当然のことです。その調整がいかに難しいかを伺えるのです。

アメリカマーケット調査による最適人材の相性とは

クリスタル・セレニティの寿司バー。シェフとの話のやり取りが楽しい

新生クルーズ会社として、多国籍乗組員を採用する前にこれから参入するクルーズ事業の基本は、ホスピタリティありきでした。

その基本には先見性にもとづいた配慮を必要として、それを提供するための人的資源の担当の確保が、新会社の組織の維持と評価にとって、極めて重要な要因と理解していたのです。

当時、新会社クリスタル・クルーズの船上滞在環境の構築には、乗組員は重要な人的資源であるとの位置付けで有り、彼らが安心してその 経験や能力を発揮するためには、公平な評価基準を経営者側と共有する必要があると考えたのです。

サービス業のクオリティに配慮をしてラグジュアリーな旅行商品を追求する新会社クリスタル・クルーズの経営の基本に、人材は資本財的性格に重点を置きつつ乗組員の労働環境がよければ、彼らの魅力に惹かれたクルーズゲストがリピーターとなり、大きな核になる客層を形成したのはすでに実証されていたのです。

それがクルーズ会社の経営と発展を支えるという構図を描いていたのです。乗組員こそクルーズ船客に最も近いところにいるクリスタル・クルーズにおけるサービス哲学の「伝道師」でした。

彼らが日常の業務で満足度が高 ければ、クルーズ船客にも感動を与える良い環境が出来上がり、結果として、彼らの「満足度」を高めることになるのです。

快適なサービスを提供する為に、現場における明確なエンパワーメント(権限付与)が乗組員をして、目先の人事権を持つ社内の上司ではなく、会社における自分の役割に向けられると雇用の確認が人材の能力を鼓舞し続け、顧客に受け入れられ、クリスタル・クルーズ社に対して忠誠心の高いリビーター組織「クリスタル・ファミリー」の輪を広げる事になったのです。

クルーズ客船がターゲットとしている客層の文化的な価値観とか、生活体験から来ている価値観に基づいている限り、多国籍船員(従業員)の持つ多様性は、新たな刺激を与え、船客との接点にいる人材の能力を最大限に発揮できるような組織が求められていたのです。

50 カ国 500 人を越えるスケール(一隻あたりの乗組員)は、期間雇用契約に基づく期間雇用であるけれども、会社としての確たる雇用条件が、彼らの仕事をする喜びや忠誠心を生むものとなるものです。

クルーズ事業の基本は、「ブランドを創る事業」であり、その計画の第 1 ステージ (新造船就航までの期間)では、ブランド価値を連想させる仕掛け、一例としてロゴマークのデザインなどはすでに手を打っていたのです。

さらに旅行商品の視点から他のクルーズ客船会社とクリスタル・クルーズは違うということをマーケットや将来のクルーズ船客にアピールしなければならなかったのです。その差別化の理由も説明しなくてはならなかったのです。

マーケットへの的確なサインを送る為には、クルーズ客船建造計画や そのプロセスの開示といったコミュニケーション戦略が重要な役割を果たしていたのです。

その過程で、これから採用する新会社の人材の持つ評価やそれに加えて「ブランド 活性化戦略の策 定」過程における旅行代理店など販売網の参画を推し進めるのが良 いとの判断であった。

アメリカのクルーズ市場におけるブランド認知戦略にあたって、アメリカのクルーズ・マーケットにおいては、サービス・プロバイダーの主観ではなく、船客層に最も近いマーケット、旅行代理店などデストリ ビューション・システムや乗船主導型で動いていると各種の調査などで理解していたのです。

従って、難問にぶち当たっときは常に最優先項目マーケットに聞く体制の構築だと考えていたようです。主観的な、思い違いなどを起こしやすい提供者価値ではなく、客観的な受益者価値の理解が必要でした。

船が就航していない 2 年間という圧倒的に不利な条件の中、ブランド構築をするには、そのプロセスにおいて絞り込んだ客層や、彼らを主たるクルーズ船客として抱える旅行代理店にはこのプロジェクトに参画を促し、積極的に「フォーカスグループ・マーケティング」の投入など検証システムを駆使。時には軌道修正もしながら、 船上の滞在環境のプログラムの開発設計をしていったのです。

そこでは、人間的な要因を前面に出したより真似されにくいサービスシステムや船上組織のデフェレンシェーションでマーケットに訴えるのが良いとの方向で固まったのです。サービスや船上組織などソフトは人的な要因が強く真似されにくいのです。

サービス面での差別化こそクリスタル・クルーズの生命線でしたので、マーケットのニーズを先取り。クルーズ船客が中心に居る滞在環境を新会社の核にすることをひたすら試行錯誤し、船上プロダクトに関して下記の面から更なる検証を行う事とした。

1・ クルーズ船客と乗組員とが織り成すクルーズ経験価値。

2・船上での人間関係での優位性は(サービスを提供する側と受ける側の相性。

3・ 滞在生活上の安心感。ホテル部門における欧州ホテルスタッフの起用。

4・ 優秀な乗組員の確保の為には彼らの居住空間に充分な配慮満足度)。

5・ スタッフの能力の「予見力」啓発システムの構築。

6・宿泊・滞在価値を高める為に自前のプロダクションショーと食事に付いては豊富なメニューや複数のレストランなどの積極的な運用。

7・ 現場への権限を大幅に委譲して現場で問題を迅􏰁に処理できる体制の確立。

1988 年半ばには、この様な検証をもとに、既に船上における商品企画)が検討されていた。 この時期、マーケットに対して、アメリカのラグジュアリー・クルーズの世界で

「なぜ、クリスタル・クルーズが必要なのか?」

の答えには、旅行代理店や将来のクルーズ船客などに意見聴取なのです。

最上のサー ビスを実現するためには、競合他社のプロダクトのみならず、積極的に陸上のリゾートホテルなどのサービスも導入し、快適な船上生活体験環境の導入を目指したのです。クルーズ船客の居住空間の充実や部屋の大きさ等にも配慮したのです。

「なぜ、クリスタル・クルーズを勧めるのか?」

このような動機付けの模索も始めたのです。

旅行代理店の要望を絞り込んで販売しやすいプロダクトを構築。これは旅行代理店のフレンドリーさを強調したものです。そしてゲストに対する再検証により、マーケットを更に再び絞り 込む作業に力点が置かれたました。

覆面調査・フォーカスグループなどの分析を駆使したマーケットの絞込みによる と、当時の我々 日本人から見た統計では、最も憧れと親しみがもてるアメリカ人であっても、この様な調査を通して立場が変わるとその見方も違う事を知らされたのです。

本音と建前の違いもありますが、当時アジア人やアジアの文化などに最も遠いアメリカ人とも言えるユダヤ系アメリカ人マーケットでは、 一般のアメリカ人とは異なった反応があったのです。

彼らの多くは日本に対して特別好意的というわけでもなく、今でも真珠湾攻撃や太平洋に関わる戦争が製作されると、大きな ニュース(特に12 月 7 日は太平洋戦争記念日としてニュースで真珠湾攻撃の映像がアメリカでは終日流れる)として報道されている現実から、ユニフォーム姿の日本人には違和感を持っている人たちが多いことが見受けられるのです。

好き嫌いという感情ではなく、日本人乗組員のユニフォーム姿には、彼らがドイツ・ナチスに対 して抱くのと同様な異質な民族感情が存在しているのではないか、といった側面からの調査を行 なうことも怠らなかったようです。このような感情が、ドイツ船「オイローパ」などはアメリカの旅行代理店や船客の離反感情を生み、アメリカ人船客は皆無に近いと言われていたのです。

つまりアメリカの市場を把握できなかった結果でもあると伺えるのです。各客層の旅行動向を的確につかむ努力が重要であり、主要客層であるユダヤ人社会を徹底的に知り尽くすことで、彼らが望まないクルーズ商品を創らない努力も必要であったのです。

その後も、いろいろな局面で、ユダヤ系船客への反応には充分配慮をする必要が生じた。

2003 年 のイラク戦争では、ユダヤ系政治圧力やクリスタル・クルーズなどラグジュアリー・クルーズ客船の主流でもあるユダヤ系クルーズ船客のフランスに対する歴史認識や感情などが、徹底的にイラク寄りのフランスを悪者にした。

その状況下での第三船「クリスタル・ セレニティ」の就航では、造船所の代替えは出来ないが、女優ジュリー・アンドリュースをゴッド・マザーとした命名式を、イギリスに移し、その後の同船の地中海就航時も、カンヌやニースなどの南フランスの寄港を回避した模様です。

これも「マーケットに聞く」姿勢を保った調査の結果でした。

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ブランド構築と差別化

クリスタル・セレニティ(68,000トン)でのウェルカムパーティー

これから誕生するラグジュアリー・クルーズ客船会社にとって、この業界で成功を収め生き残る 為には、既存のクルーズ客船社との違い、すなわち、既存の会社の 真似をするのではなく、多くの革新的発想を取り入れて、その違いを差別化し、独自性の主張が重要でした。

新会社は、既存社の模倣ではなく、新しいコンセプトを至る所にちりばめたプロダクトにする必要があったのです。同業他社の真似をするだけでは、新規事業は、存在の意味を薄めることとなるのです。他社と違うことを実行しなくてはいけないのでした。

新􏰀船を建造するにあたっては、ハード(船)面に関しては、比較の対象とする具体的な「モノ」(この場合は客船) があったので基本的な方向付けや各種の技術革新の導入は、 新造船の設計段階から織り込み済みでした。

しかし、客船を基準にした差別化には限界があることも知っていたのです。新造船の多くの技術革新や構想も、この新造船が世の中に出る頃には、他の会社の新造船に真似され、造船所自体がその新しい技術を次の船に応用しようとする新造船(クリスタル・ハーモニー:現「飛鳥Ⅱ)のベランダ比率がマーケットで評判になるとすぐ、 他のクルーズ客船社も同じようなコンセプトの新造船を建造して北のです。ハード面における差別化は、クルーズ事業のような、ライフスタイルやファッション指向の強い旅行商品には持続性に欠け、すぐ飽きがくるのです。

そこで既存会社との差別化において、勝負は船上における「ソフトの中身やサービスなどを含めた滞在環境が全て。斬新にして温かみのある仕掛けを作ることが、この成功への鍵で有ると考えたのです。

クルーズ船客は、クルーズ旅行に、船上で の出来事、旅の持つ「プロセス =過程」に感動する。したがって、クルーズ船客自身が主役となるような船上生活を演出する必要があると考えたのです。

船上におけるサービスやソーシャルな環境のシステムを、いかに構築するかという新しい挑戦が始まったのです。

新しいクルーズ客船会社の船客にとって、快適な船上滞在環境を演出する為には 「顧客が何を望むか」を常に考える必要でした。

新しいクルーズ客船会社としてのビジネスモデルの構築を実現する ために、各種の調査を通して、ネガティブな要因を出きるだけ取り除き、彼らのライフス タイルを先取りする事に焦点を当てるようにすべく、基本的な考え方を整理していたのです。コンテンツやサービ スなどのソフト面では、トレーニングやマニュアルの質の向上を実現。船上でのサービスに加え、既存会社には無い「人との出会いやエンターティメント的要素が重要です。

その人間関係の織り成す要素をより重要視し、「クルーズ船客同士か、乗組員とのコミュニケーションの機会を多くすることで、既存のラグジュアリー・クルーズやそのコンセプトを超えることが大きな課題でした。 差別化を中心に置き、船上で出会う人の持つ能力とそのケミストリー(相性)を置くことなのです。

このクルーズ事業でもっとも大事な船上での滞在環境の構築には、オーナー側知識がほとんどなかったのです。その船上ソフトの構築や他社との差別化戦略には、この新事業に参画してきたフライデンバ ーグ副社長(当時)他、ロイヤル・バイキングクルーズ社出身者の経験などが非常に貴重でした。

彼らは、 仮想競争相手となるロイヤル・バ イキング社の客層と船上のプロダクトに精通している強みがあったのです。当時のクリスタルクルーズ社は彼らの経験と新鮮なイメージを融合させて、マーケットにインパクトを与えなければならなかったのです。その既存のクルーズ会社を熟知している彼らの経験を元に、米国クルーズ業界新参者としてこの業界に参入する新しいクルーズ客船会社は、ロイヤル・バイキング社 などの既存社との違いを明確にしておくことが必要だったのです。

セールス面で見ても、他社船に乗っているクルーズ船客の誘客も大事であるが、これから 創る会社の核になるクルーズ客層を確立するためには、この差別化の確立により、 新会社独自の客層を創出し、将来、囲い込むこと。そしてリピーターから、クリスタル・クルーズ社に対して忠誠心の高いファミリーメンバーにすることが、より重要であると考えたのです。

その実現のためには主要客層と定めたマーケットに対してサービス提供者としての”主観”を横に置き、忠実に「サービスの受益者であるマーケットに聞く」姿勢を徹底し、耳を傾け、既存会社にありがちな先入観を払拭しながら、彼ら のニーズを先取りするという事が重要であった。そのニーズこそ、忠誠心の高い顧客のライフスタイルなのです。そのライフスタイルに耐えうるような、クルーズ船客同士や乗組員等との生活体験環境を提供し、その中で船上での人間が織り成すケミストリー(相性)が「命」なのです。

このクルーズ事業を検討している時、投資者側から、船上のホテル部門は洋上のホテルみたいなものだろうから、日本の既存の有名ホテル(例えばホテル・オークラなど)との提携してはどうかと言う選択肢も提示されたのですが陸上のホテルとは大きな違いがあったのです。

議論もあったが、アメリカの現地会 社としては、この意見には全く納得できなかった。一方、陸上のホテルなどの場台、立地場所がその性格を決めるのです。その多くは、宿泊と食事+そして宴会等で構成され、ホテルの滞在客よりも通過客も多く、その舞台裏はクルーズ客船と全く異なっているのです。

陸上のホテルは、食材なども、その周辺環境の中で調達もできます。その点、クルーズ客船は長期滞在する旅行者に、寄港地観光と船上の滞在型のサービスを提供することを基本とする以上、船で移動中といえども船上で滞在中の食材などの調達は世界各地から取り寄せる体制となっているのです。

クルーズ船客にとっては、「宿泊や食事 、そして娯楽施設や会合機能を中心とし、全てが船上で完結するのです。たとえば、食事の提供も、船上で生活 する全てのクルーズ船客に、日替わり,時間替りの多彩なア・ラ・カルト・メニューで、 ク ルーズ船客を飽きさせない体勢が必須であるが、陸のホテルの宿泊客が、ホテルのレストランで何時も食事をする訳でもないのです。

彼らには、外食の選択肢もあります。またサービスを提供する雇用事情も大きく異なっていたのでした。

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クルーズ客船事業は社会心理学

クリスタル・セレニティ号でのガラ・ビュッフェ

時は1988年 5月、サンフランシスコでの旅行代理店等とクリスタル・クルーズのプロジェクト関連の話題に関して直接意見を聞く機会がありました。

この意見交換会での議論の多くは、アメリカ人乗船客に対する接客能力に関しての話てがメインだったそうです。

クリスタル・クルーズの経営首脳陣は、NYKが運航するクルーズ客船でもあり、何とか日本人幹部船員を新造船に乗せたいと強く思っていた。

しかし、サンフランシスコなどでアメリカの旅行代理店などの率直な意見を聞いているうちに、NYKの海務関係者の説得には、更に中立的な調査による分析が必要として、更なる調査を命じたのです。

1990年になって、アメリカとして客観的な調査を開始。

まずは新会社、クリスタル・クルーズ社の在り方。組織問題等の話題になりました。

日本とア メリカを駆使して、幹部国際船員の混乗や英会話力なども含め、アメリカのクルーズの販売の前線にいる旅行代理店網やクルーズ乗船客。

特にラグジュアリー・クルーズの主客層であるユダヤ系アメリカ人乗船客などの「本音」を聞く事にしたのです。

主観的な議論を避け、できるかぎりアメリカマ ーケットに聞き、彼らの見方・客観的な分析との対応を優先したのです。

アメリカ市場が最も求めるプロダクトを作らねば生き残れない事を当時のクリスタル・クルーズの幹部は知っていたのです。

旅行代理店や乗船客の見方・価値など買い手価値をどれだけ実現できるか?

この事業で生き延びて、アメリカの起業コンサルタントなどとの接点を通して、この事業を成功させるため残る鍵であると感じていたのです。

先ず、販売網である旅行代理店などのマーケットの反応を調べる事とした。

アメリカでのクルーズ客船の集客は旅行代理店を中心としたデストリビューション・ ネットワークに依存している以上、仮に彼らの意見がきわめて偏見に満ちて溢れていたのです。

就航実績のないクリスタル・クルーズの現状下では黙って謙虚に聴くしか方法はなかったのです。

調査で、旅行代理店からは以下のような多くの厳しい質問が浴びせられました。

・日本郵船の日本人幹部船員の語学対応およびクルーズ客対応能力については一切判らないが、在米日本人駐在員等や家族との接触などから推察すると国際レベルで中以下ではないのか?

・ノルウェー人船長と一緒に働くと言うが、緊急時にノルウェー船長の指示に基づき、自分たちが 送り込む)アメリカ人クルーズ船客に迅速に対応できるのか?

・クリスタル・クルーズは、ラグジュアリー・クルーズとは言っているが、乗船客を初めての試み(日本人とノルウェー人上級船員の混乗)の「実験台」にするとはどういうことか?

以上、旅行代理店の多くは、貨物船の経験と接客が重要視されるクルーズ客船とでは、安全運航への対応がまったく異なるのです。

そのコミュニケーション能力が重要ではないかと、緊急時の 日本人幹部船員のランゲージ・コミュニケーション」能力はどの程度かをとりわけ危惧していたのです。

まず、新会社の在り方、組織問題などの話になりました。

文化や価値観、考え方が日本とアメリカの溝を埋める方法を模索されていたようです。

例え話としてコンサルタントから得ていた情報などを元に、アメリカのメジャーリーグの野球チームの組織などの話をしました。

球団経営とその現場である野球場での監督選手の行動責任などの明確な分離について首脳陣に話したのです。

現場の監督が活動しやすいように、現場の選手に対する差配は球団はしない。 しかし、勝負の結果に関しては、契約を元に口を出すといった、棲み分けを明確にする必要がある のではないかとお話をしたのです。

販売網である旅行代理店には、アメリカ人幹部などのノウハウや経験を中心に置き展開することが必須条件でした。

彼らが、ある程度自由な判断で活動できる環境が重要ではないかと言う意図でもあり、乗り出し時は、ブランドが確立するまで、NYKというの会社のブランドより、アメリカで採用した欧米の幹部経験者の力を優先する仕掛けではなかったのかが懸念材料でした。

このプロジェクトの素案創りの段階から、アメリカ市場を前提にすれば知識も経験も少ない投資家側の主張よりも、「郷に入っては郷に従う」仕掛けが、重要だったのです。

日本には、NYKや他の会社が築いてきた日本の常識やスティタス・歴史は有るだろうが、この事業は、アメリカで展開する以上、投資家であるNYKが、アメリカの仕掛けに あふ程度任せる寛容さが無ければ、将来もこの異文化の軋轢は残り、上手くいかない可能性が高いと思われたのです。

ここは日本の常識を超えた、新しい世界基準に基づいた組織や仕掛けを考えるのです。

このような日本の常識が、世界基準では必ずしも受け入れられていないことを経験的に理解していたのです。

この会社経営に横たわる日米間の考え方の違いに加え、日本郵船が採用した「便宜置籍船」を基にした新会社の船舶運営やこのところ顕在化していた日諾幹部船員問題についても話をすることが出来たのです。

しかし、他のアメリカの有力クルーズ会社の経営から得た知識を元に議論すると、この事業 は、クルーズ先進国やマーケットを攻めながら、新しい会社としてのプランドを創る必要があったのです。

投資家である日本郵船の自社都合で、マー ケットの意向と対立することは、全くゼロから始める会社にとって本末転倒ではないのかと思われていたようです。

今回のNYKの英断である便宜置籍船の持つ特性を最大限に活用して、他社の追従を許さぬ地位を確立するという発想があったのです。

その実現のためには、この業界で経験が豊かで、ラグジュアリー・クルーズの基本をなす幹部人材に対するアメリカの販売網の評価が高いノルウェー人幹部船員たちの経験を軽視・無視する考えは成立しません。

彼らの経験を最大限に使い、それに更なる革新を加えて、既存の船社に対抗する戦略が賢明かと思われたのです。

新造船や建造や営業開始等、時間的な要因を考慮して、アメリカクルーズ業界にて未経験である以上、我々の置かれている立場を謙虚に理解するしか他に無かったのです。

米国クルーズ業界で最も評価の高いといわれるノルウェーの幹部船員を核にして、この事業を乗り出し、NYKとしての日本人幹部船員の登用については、5〜10 年後を目処に見直すことも可能にする方法もあったのかも知れません。

NYKの運航部門が熱意を持って、世界に通用するクルーズ会社の運航を主導したいと主張しているのであれば、具体的な目標を立て、幹部船員候補生に積極的に、他の欧米の客船での長期研修やアメリカ社会にどっぷり浸かるような長期英語・文化研修制度を導入する事なども考慮すべきかと思います。

このアメリカや世界の最高レベルでのクルーズ事業の挑戦が今後も続くという事であれば、クルーズ客船向け幹部船員の養成に関しても、日本郵船として、抜本的な体制を検討する必要があるのではないだろうかなどと議論したのです。

明治時代に、NYKが日本で始めて外航海運を始めたころ、航海に対する知識が無かったそうです。

その窮状を解決するために、イギリス人船員などに任せたエピソードがありました。

同様にクルーズも、運航面以外の多くの船上における業務や乗船客との交流を考えると、将来を見て、じっくりした対応が必要かと思われたのです。

乗船客とそれを接客する船上の幹部船員との関係は、社会心理学のケミストリーの世界だと実感したのです。

ラグジュアリークルーズ事業は、高いクルーズ料金にもかかわらず、自前で、船上での滞在中の時間を楽しみを求める乗船客で成り立っているのであって、それを満足させる仕掛けが不可欠なのです。

乗船客の大半は、アメリカでの生活形態の”日常性”をそのままクルーズ客船と言う滞在空間に持ち込み、その環境で世界を周遊する人たちなのです。

彼らの日常の生活において、彼らの交流の基本である言葉の問題(英語)などで苦労があってはならないのである。使い勝手の利便性などで、相対的に判りやすいモノの価値観とは異なり、船上で経験するソフトや コンテンツには、それに参加する乗船客の主観的意向が働きやすく、まさに人間関係が織り成すケミストリー(相性)の世界なのです。

企業側の”主観的な”判断や経験で良いと思って も、対応される乗船客の主観は別のところにあるのです。

彼らがクルーズを楽しむために用意した旅行資金を、新会社のために使ってくれるかどうかは、彼らしか決められないからです。

世界を舞台にしている日本郵船の幹部船員も、この分野においては全く素人であり、言葉の問題 に加え、この経験不足は即戦力を活用し、世界基準の実現には、時間が掛かりすぎたのがネックだったようです。

マーケットや相手が何を考える かを予見して、出来るだけネガティブな環境を避ける舞台づくりを優先せざるを得ないのでした。

より客観的なデ ータを下に議論を詰める事にしていたが、その多くは「船も就航していない段階で、サービスの実績を示す前にイメージだけで不要な先入観を商品開発の過程で入れないほうが良い」と言うのが、PR 会社や各種の覆面調査を経た旅行代理店や将来の潜在的な乗船客の意見でもあった。

当時クリスタル・クルーズは、まだスタートしていないのでした。

理想は日本郵船の船長が前面出て、接客の面でも堂々とアメリカ人乗船客とやりあえて、ノルウェー人幹部船員などを自由に使えればよいのであると思案したこともありました。

しかし、当時のアメリカ人幹部が、日本から出張してくる 船員などとアメリカ人幹部との日常会話などを通して、現在の「英語力」「会話力」 では彼らは残念なが ら納得しなかったのです。

戦前の日本郵船の欧州航路の客船は、行き先が決まった日程で、そこに辿りつく事が最優先されていたのです。

そのためには、船上の会話や滞在環境などよりは、目的地に少しでも早く着くことが最優先されたのである。

それに対して、自分のポケットマネーで好きなことを自由に楽しみ、時間に対する満足度が勝負の現代的なクルーズとは全く目的が異なったものでした。

ここに、戦前の日本郵船の客船と戦後の周遊を目的とした「時間を買うクルーズ」との違いがあったのです。

「その第一番に乗る日本人の英語力などが今問題になっているのです。

まずは第一船の事業展開を成功させなければならなかったのです。

次の段階として第二、第三船も建造し、就航させてこの道で成長することを望んでいたのです。

乗船客のニーズを満たし、同業他社との競争に勝ち残ってこそ、未来を開けてくるものです。

これら現実を前に、日本郵船本社も決断した模様でした。

船上の組織、特に指揮系統に関しては「マーケットの要請」を受け入れ、ノルウェー・システムすなわちノルウェー船長の下でノルウェー副船長と日本人副船長を配し3 人の船長体制を構成し、機関部についても ノルウェー・システムを日本人幹部機関員が補佐する体制が出来上がったのです。

また日本郵船から派遣されるクリスタル・クルーズの海務担当執行副社長は経営・監督業務に専任する事になったのです。

この方向性に関してはクリスタル・クルーズのアメリカ人幹部も全く異論が挟めなかったのです。

新規事業の立ち上げでもあり、これからの事業の方向性と自分たちの置かれている状況を、客観的に見詰める事が重要であり最初のボタンの賭け違いを何としても避ける必要があったのです。

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クルーズの究極の在り方

ベニスに入港する「クリスタル・セレニティ」

理想的かつ究極の船上滞在環境のを求め、プロセスを重視するホスピタリティ事業では、旅行者との接点は、常に「ヒト」が中心でなければ成立しません。

クリスタルクルーズ社がラグジュアリークルーズ客船の業界で認められるためには、船上での滞在環境を構成する「ヒト」にフォーカスし、クルーズに乗船する歓びを体験してもらうためには「船上での商品開発」が決め手です。

クルーズ旅行に参加した思い出は、旅行者の脳裏に刻まれ、永遠の旅の感動を創ると思われます。そのためには従来のラグジュアリー・クルーズ客船会社の真似は避けたいと思われていました。

船上でのコンテンツを構成する食事や娯楽のみならず、個性に溢れる多国籍クルーの採用も含め、彼らの持つ多様性や独自性を積極的に露出して、新会社が絞り込んでいるクルーズ客船マーケットに、常に100%以上の満足を提供できるような仕掛けが必要であったのです。

長期間に渡る各種の事前調査が生かされ、クリスタルクルーズ社が狙うべき客層から、顧客のライフスタイルに対する分析は出来ていたのです。

それを前提でクルーズ乗船客が、クルーズ旅行に求めるものは、 Ship(船)・Service(サー ビス)・Social(ソーシャル = 社交)に加えてRomance(エンターテイメントを含めた食後の環境)であることです。

クリスタルクルーズ社の主対象とするラグジュアリークルーズマーケットでは、彼らのライフスタイルが所以となる船上での「サービス」と「出会い」に非常に大きな期待を持って乗船してくる人たちなのです。

ゲストの船上における体験価値の評価においては、この「サービス」と「出会い」が、非常に大きな影響を与え、この 2 つの分野でその舞台の仕掛けを考える必要があったのです。

その舞台では、船上で共に滞在を楽しむ「ヒト」とクルーズ乗船客とサービスを提供する側に居るクルーが、密接に交流して創られる環境でもあります。

対象が「ヒト」である以上、船上での舞台装置には、船上での人間関係がサービスをされる人たち同士のケミストリーとサービスをする人とされる人の相性、そして多国籍船員を中心としたサービスをする人たちの適性などの密度が豊かな「船上滞在体験」向上の要であると理解していたのです。

(1) クルーズ旅行の主役は「クルーズ船客」 :顧客のライフスタイルを知ること

長期滞留しながら船上生活を楽しむ多くのクルーズ乗船客にとって、その「ライフスタイル」と言う基準を通して、快適な人間関係が創られる事が望ましいのです。

確かに、 モノを買うのも旅の楽しみの一つであろうが、クリスタルクルーズ社の想定していたアメリカの客層にとって、究極の旅とは「旅の過程を大事にし、その体験を心に刻むこと」であると考えたのです。特に、彼らは夫婦の 場合、その体験を通して、 人生の足跡を「同期化」することにより、夫婦の喜びや失敗も共有できるのです。

ラグジュアリークルーズの乗船客は、船上での滞在生活の中に、人生の「物語」を求めているのです。 思い出を心に刻みたいと思っているのです。記憶に自分自身の人生の価値や感動を刻む仕掛けが、 クルーズ乗船客から与えられた至上の要請でなのです。

その実現のためには、彼らの船上におけるライフ・スタイルに最大限に配慮、言い換えると「乗客の世界を知らずして、心配りはできない」ということ理解をし、クルーズ旅行の中心に 「クルーズ乗船客がいる」という、船上での“舞台”を演出することが必要でした。

船上で彼らが持つライフスタイルや生活や文化と船上で提供する舞台装置の融合する仕掛けが成功の可否を決定するのです。

「サービス」という船上のプロダクトの評価は、多くは「人的要因」で左右される傾向が強いのです。 相性がよければ、訴求力もあり永続性が高いのです。したがって同業他社よりも優位に立つためには、この 「人的要因」に的を絞り、 アメリカ人乗船客のライフスタイルを理解してクルーズ船客 と船で働くクルーとの相性を強化することでした。

クルーズ乗船客との関係においては、人間関係を基本としたサービスを提供すること、それがホスピタリティサービスの基本です。

これがゲストとクルー双方の 信頼関係や相性で成り立つものです。クルーズ船客は、自らの支払うクルーズ料金に対して、クルーズ会社からのこのケミストリーとそれ相応のサービスの提供に「期待」を込めているのである。

「ソーシャル(社交・人的交流)」についてみると、船上における「ヒトとヒトの織り成す人的な要因つまりケミストリーです。それもお互いのライフスタイルが理解できる客層同士が、その宿泊・滞在経験価 値の核をなすのです。

従って、新会社として、この事業を長く続けるためには、先ず 「ソーシャル」の分 野で他社と大きな違い・特徴を生み出そうと考えていたのです。この充実度が、将来の戦略の核となり、他社 との差別化で決定的な差となると思えたのです。

それは、船上におけ るコンテンツのみならず、営業の面における販売網における戦略なとも連動させる必要があったのです。 この確信を元に「ソーシャル」の面から、船上の滞在環境を考える際に、下記のようなシナリオ を描いてみました。

船上の滞在環境は、クルーズ乗船客が主役で自分がすべての中心にいると認識させる滞在環境を演出します。その上で、 従業員(乗組員)との親密な環境を演出し、「ファミリー(後のクリスタ ル・ファミリー)」的雰囲気を創り出すのです。

「サービス」は、クルーズ客船運航会社の仕掛けである程度対応できるにしても、「ソーシャル」は、そこにいる乗船客同士間の交流です。

新しい仲間との交遊の楽しみや人情の発見や歓楽 欲を満たすような食後のロマンチックな環境が重要なのです。

これを円滑にするためには、主役であるクルーズ乗船客を支える多様な文化的歴史的な背景を持った多国籍クルーやアメリカ以外の第三国から訪れたクルーズ乗船客の心地よいハーモニーが必要なのです。日本的で同質的な「おもてなし」を越え、国民性の違いを通して、「感動」や「感心」そして「新しい発見」などがこの事業に活力を与えると明らかになったのです。

このようなクルーズ客層の中から、彼らのライフ・スタイルに合わせて、最も快適な環境を創り出すのです。その環境を創るということは、これらの人たち の乗船客のライフスタイルを理解し、彼らが日常どのような生活をしているのかを知り、どのようなものに興味を持っているかなどを知ることの理解に努めることです。

サービスを提供する側としても、例えば食事のテーブルホストとしての役割は、食事の質やサービスに加えて、そのダイニングテーブルで 2 時間余を、彼らが興味を持っている朝のワイドショーや テレビ番組やソープ・オペラなどの話題にも積極的に参加できるような、ある程度の「彼らの中の常識」を基にした常識と会話力が必要です。

サ ービスを提供する立場としては、船上での社交を通して、彼らが 快適と思う「滞在体験」と「相性の合う乗客同士のコミュニティー」の本質を常に見極める必要があります。

c) 「ソーシャル、つまり相性の合う乗客同士のコミュニティを形成するには、「贅沢な選択肢」の提供が掲げられます。

ラグジュア リークルーズでは、「長期滞在」が基本で、彼らにとって滞在中の食事をはじめ、人の出会いや多彩な娯楽など、感動と感性を覚醒する滞在環境を演出する必要があるのです。

決まり切ったお仕着せの企画ではなく、多くの選択肢の中なら、乗船客が気の向くままに選べるだけの潤沢なメニューを満たす商品企画力が必要となります。

既存のラグジュアリー・クルーズ客船社との差別化のために、新しい試みとして、競合他社のプロダクトのみならず陸上のリゾート・ホテルなどのサービスやそのコンセプトも積極的に導入し、これは多彩な食事の面でも考慮されねばならないです。

(2) クルーズ船客の求める”主観的”価値観と出会いを創る環境 ……船客は、「ストーリー」に価値を求めている

これから始めるラグジュアリー・クルーズ業のターゲットとする客層は、「モノの 所有」よりも、 クルーズ客船上における人との出会いや滞在中の体験などを、「心に刻む」ことに、より価値や感動を求める人たちである。船上での「人との出会い」の出会いを、より感動深いものと感じてもらうことが重要と捉えています。 その場を作るためには、食事の後の充実したロマンスやエンターテイメントや食後酒も必要です。

クルーズ旅行のリピーターは、極めて主観的な旅行経験や体験、そして新しい発見や感動”に加えて自らがどのような扱いを受けたかなどで、クルーズ旅行の価値を考える傾向があります。

例えば、あの従業員の態度が悪いとか、テーブルに着いてから食事の時間までが長いか短いか。隣の旅行者の食事の量は自分のものと比べどうか。ウエイターのサービスは自分に対して差別的でないかとか、それぞれの能力とは別の 所で評価されうる事もあるのです。

どれもかなり主観的旅行経験であるが、彼らはこのような主観で旅行自体の満足度を評価します。自分の旅の「物語」の充足度に価値を求めているのです。

クルーズ事業は、主としてアメリカ人クルーズ乗船客を対象とした彼らの「文化」を 取り込む事業なので、まず何としてもアメリカ人マーケットから受け容れられる仕掛けが必要であったのです。

これを理解していれば、船上での多国籍クルーとの相性が織り成す親密さが創れるのです。自分の身の回りでサービスをするクルーや、毎日食事の際にテープル・ホストとして 2 時間余も会話をこなす幹部乗組員の役割は極めて重要です。

100%のサービスでクルーズ乗船客に受け入れられて、120%で初めて高い評価を得る関係でもあるのです。

(3)クルーズ乗船客と従業員の織り成す「相性」

クルーズ旅行は、船上での「体験価値」が重要な要素となっており、当然クルーズ客船社として は、クルーズ船客が主役の「感動」のドラマをどのように演出するかを考えなければならない。そ の多くの分野では、主役であるクルーズ船客とその脇役である多国籍クルーとの相性で決まると言っても過言ではありません。クルーズ乗船客の期待度が高ければ高いほど、脇役のやりがいは大きいのです。

各種の調査やこの道のエキスパートから、この「ケミストリー」の濃さこそが、 ラグジュアリー・プロダクトの世界では最重要であると指摘を受けたのです。ここを「個性化」し、他のクルーズ客船社とは違うケミストリーを構築する必要性を理解していたのです。

他の既存ラグジュアリ ー・クルーズ客船会社のプロダクトとの差異化も図りつつ、クルーズ船客と乗組員間での 感情面でのつながりを強化します。ここの評価が定着すれば、クリスタル・クルーズ社の顧客層に新会社のプランドが 認知され、ロイヤリティ、つまりリピーター増大も可能です。

一方、クルーズ客船上において人間関係のおりなす相性がうまくいっているときは良いが、1 度でもあるいは些細なことでも「思い出の心」に傷がつくという、非常に厄介な負の部分もあることを理解する事も大事なのです。

その負の部分に無関心であると、せっかく誘致に成功した乗船客を逃してしまうのです。

この負の部分、彼らが何故離反するのかの追及と生産工程のようなゼロディフェクト効果でサービスの質の向上を心がけるシステムの構築が必要なのです。

ラグジュアリークルーズ旅行では、年に数回も乗船するような多くのクルーズ乗船客(リピーター)で支えられている旅行商品なのです。

このリビーターの多さは、クルーズ船客・旅行者の満足 度や感動度の高さと比例している。統計的にこの理由を掘り下げていくと、船上での生活体験と其 処で織り成す「クルーズ船客」 と乗組員との相性にたどり着くのです。

クルーにとっては、 クルーズ乗客船での勤務は、職住が一緒の逃げ場がない舞台なのです。

また年に2度 3度と同じクルーズ客船に乗ると前回と同じ顔ぶれのクルーが、”ウエル カム・ホーム”(おかえりなさい)と 言いながら出迎え、家族の一員のように親しみを持って旅行の手助けをしてくれるところもクルーズ客船による旅行の最大の特徴のひとつです。

彼らとこのリピーターとの多くの交流が、この クルーズ会社の「ファミリー」としての強い絆になる。換言すれば、クルーズ客船の乗組員 は、同じ船の家族 の一員であると同時に、旅行をより快適にするための添乗員の役割も果たしてい ると言えましょう。クルーズ客船上での彼らとの出会いが新しい「滞在価値」を覚醒するのです。

(4) クルーズ乗船客が求める舞台とそれを提供する多国籍クルー

旅行代理店等の販売網(デストリビューション・システム)との覆面調査などの分析を通して、主要船客のライフスタイルを前面に出し、クルーズ乗船客とクルーの交流や接触の機会を高め、 深める仕掛けが必要でした。

ホスピタリティ産業の”商品”を構成するファクターの中で、最も重要なものは、ヒューマンなケミストリーにより構成される想像力とそれを行動に移す実行力です。

そこにはクルーズ客船運航会社の種々のノウハウが凝縮されるわけで、仕掛けで模倣は出来ても、「心」まではそう簡単には真似されないものです。

クリスタルクルーズ社のブランド構築とそれを定着させるその「心」の仕掛け、ブランドの持つ価値を最大限に高める環境作りが 極めて重要であったのです。

この舞台づくりには、それを構成するサービスする側の人材の発掘とキャステング、多国籍人材の国民性や多様性を充分発揮させ、クルーズ乗船客との相性を醸し出し、クルーズ会社独特のクルーズ船客と従業員(乗組員)のケミストリーを作り出すことが最も必要であるとの 認識に至ったのです。

当時のオーナーである日本郵船本社と現場の新会社の幹部間では、「便宜置籍船」方式 の導入を決めていたのですが、当事者間ではこの旅行商品の将来の成功の可否を握る大きな柱でああったのです。

特に、この新規クルーズ客船事業は、企業ミッションで、今まで経験のないような「滞在型のリゾート」のコンセプトを基本としたクルーズ客 船運航会社を創り、優れた旅行商 品を提供すると謳っている。この実現のために、サービスコンセプトの基本に、有能な国際乗組員の採用と運用でクルーズ船客を満足させる船上での体験環境を構築する。サービスに関して は、クルーズ船客 にとって「バリュー・フォー・マネー」(納得感)が評価しやすい環境、すなわち 彼らのニーズに合わせたサービスの提供により満足度や感動を高める、その結果、リピーター率の 向上と彼らを通しての「ロコミ」客などの新規客の誘客層の拡大など、将来の万全の態勢に備える事を認識していたのです。

その「長期滞在」の場を提供するクルーズ客船事業を舞台裏で支えるのは、「多国籍 」乗組員が持つその多様性と感受性の豊かな人材力に賭けることにしたのである。感動は、予期せぬ出 来事などが生み出します。失敗が成功へのヒントになるのは、この予期せぬ出来事のお陰である。考え方も多様であれば、その対応も異なるのです。

ここに目を付けたのである。日本でよく話題になる「同質的な価値基準 (マニュアル) 」での格式的な対応は、多くは問題の「処理」に目が行きがちで、多様な人種や文 化的背景で育ってきたアメリカ人船客の相手により異論を生みやすい傾向があります。感動には現場での問題の「処理」よりも「解決」が重視されなければならないのです。

陸上のホテルの労働環境と異なり、クルーズ船客と同じ生活環境を共有する船上では、ホテル部 門の従業員(乗組員)の個性や国民性をクルーズ船客に「露出する」ことによって、この事業が成り立っているのです。彼らが船上における 滞在環境も含めて愉快に働く環境、従業員の満足度、つまりロイヤリティがあればリピーターの多くは、彼らの仲間になり、満足度も高まり、彼らも 「ファミリー」の一員になれるのです。

「ファミリー」になれば、阿吽の呼吸が機能し、その「ファミ リー 」を構成する船上のクルーは、クリスタルクルーズ社の船上における「旅行商品」セールスマンにもなるのです。

(5) サービスを提供する多国籍クルーによる多様性

アメリカの旅行経験の豊富なクルーズ乗船客に、今まで経験のないような充実した船上での滞在経験を提供するには、世界の人的マーケットから、最善の適材適所の人材を調達する事が不可欠でした。

適材適所の多国籍クルーの採用が可能であれば、最適なクルーとクルーズ乗船客との比率を構築でき、それがクリスタルクルーズ社の成功の鍵を握っているのでした。

この分野で、「便宜置籍船」としての有利さを十分 に発揮する必要があります。多様な人材のリクルートを容易にするような、船籍をバハマ(ナッソー)である事が重要でした。

良質なサービスの提供を、多国籍クルーの採用により、その国民性を背景とした個性に溢れたダイバーシティ(多様性)を最大限に発揮できるサービス環境を構築することが、この事業の仕掛けの中で、最も重要なものの一つでした。

主役であるクルーズ乗船客に充分に 心配りが出来るような船上でのホテル組織を構築する必要もありました。アメリカ人クルーズゲストを念 頭に、サービス部門で言うと、ダイニングに最も適した国民性は何処か・クルーズ客船の 台所であるギャレーのマネージメントは、

「どこの出身者に任せるか?」

「部屋周りのスチュワーデスなどは何故北欧系の女性が好まれるのか?」

などを精査してクルーの国民性などを中心とした混成チームを検討したのです。

クルーズ事業において、船上で働くサービスを提供する人は、彼らの生活や会話 力はもとより、 サービスをする側の「感性」や行動に対する「予見力」が重要になるのです。

エンターテイメントの世界 で言えば、映画の俳優のような、切り貼りが出来、一方通行の役では務まらない。彼らが職住を共 にするので、クルーズ船客の反応を冷静に読み取り、その場で柔軟に対応しながら、臨機応変さに裏づけされた、船上生活と言う舞台周りを創り出すパフォーミング・アーチストでなければならないということです。

船上の生活環境は、アーティストが、観衆を前にしながら、感謝の心とともに、最高のパ フォ ーマンスを見せる舞台なのである。彼らの個性と、そこに滞在するクルーズ船 客のケミストリーが 最も大切なのです。

“浮かぶ別荘”といわれるクルーズ客船での滞在生活が快適か否かは、脇役として のホテルサー ビス部門の乗組員の個性、相性の善し悪しで決まると言っても過言ではありません。

クルーズ会社としては、常に優秀な従業員(乗組員)を確保する事が、サービスの向上のためには必須の要件になります。

それと同時に、従業員の毎日を快適に維持する必要も感じていたのです。自分が、運航会社からリスペクトされたていると認識している従業員は、多くのクルーズ船客に、より多くの感動を与える事を知っていたのです。

船上サービスの「命」である人的要因は、対象顧客にとってもっとも望まれる(国籍的に)適材適 所主義とし、世界の人材マーケットから採用する。多国籍船員の背景にあるナショナリティ(国民性) の特性を最大限に生かすことです。

欧州のそれぞれの国民性の持つ個性や特性を残しながら、それをクリスタルクルーズのサービスミッションやサービス・マニュアルであるクリスタル・ベーシックで、 均質化するを目指す戦略を描いたのでした。

(6) 多国籍乗組員同士による相性

船上でのサービスの基本をなすスタッフの構成に関しては、適材適所を旨として 白紙に絵を描く 作業から始まった。数度にわたる「覆面調査」や旅行代理店、他のラグジュアリー・クルーズ客船 に乗るクルーズ乗船客等との接触でクリスタルクルーズ社にとってのベストの組み合わせた相性を考えたのです。

それは多国籍従業員(乗組員)間の相性のみならず、クルーズ乗船客との相性、すなわち「マーケッ トに聞く」という基本姿勢を貫く事が重要と考えたのです。

船上ホテルにおける、サービス・システムに関しては、アメリカ人船客が高く評 価する欧州スタ イル採用を決めていたが、具体的にはノルウェイ・システムとオーストリーア・システムの良いところを併用し(後のクリスタル・スタンダード)を構築したのです。

適材適所の人材を世界各地から集めるといっても、闇雲に手当たり次第とはならない。

彼らの国民性とか、その生活環境からの個性・経験などが、複雑に絡み合って、アメリカのクルーズ乗船客に、快適なケミストリーを発信する必要があります。そのため、船の乗組員の構成は、アメリカ人船客(マーケット)の意見を聞くこととした。世界でも最上級を狙う以上、それを実現できる人材を、ヘッドハントも含め確保することを基本方針としてこれから採用戦略を練る必要もでした。

つまり、アメリカ人が見る国民性やイメージ、たとえばイタリア人=人との交流、ドイツ人 = 几帳面 さ、ノルウェー = 清潔感を十分に配慮して決めることとした。

クルーズプロジェクトが、具体化する過程で、多くのクルーズ客船の従業員(乗組員)構成などに 関して、現状とそれに対するクルーズ船客側・旅行代理店などの集客組織側の意見を集めていたが、 それらのデータなどを元に、基本的なクルーミックス(従業員構成)の基本構成を描くこととなった。

a) 本船運航部門においては、マーケットを席巻している仮想競争船社としての ロイヤル・バイ キング社や NAC 社が念頭に有り、北欧系の船長を含め、日本郵船の優秀な乗組員も乗せ、幹部船員 については、ノルウェー船長他、ノルウェー・日本人の混乗(日諾混乗)とすることとした。

オーナー側の日本郵船東京本社としては、ノルウェー船長は「接待」要員としての船長で、運航の実務は日本郵船の船長が握るとの発想で始まったのです。

また船上におけるホテル部門については、ヨーロッパ系ホテル従業員の起用を次のように考えた。

・ ホテル、ダイニング従業員 ヨーロッパ系
・ スチュワーデスクルーは北欧系
・ ダイニングのギャレーはオーストリア人シェフ

他にもエンターテイメント部門トップ 上品な個性と「スタイル」を持っている英語国出身者が起用されたのです。

(7) クルーズ船客と乗組員の乗船比率

長期滞在の場を提供するクルーズ客船事業は、「滞在型のリゾート」のコンセプトが基本になっています。クルーズ乗船客層を絞り込んだライフスタイルを基準にした客相に合わせて、彼らにとって 最も快適な環境をづくりを考えると、今までの調査などで、適材適所の国民性以外に、サービスする乗組員の人数の試算も重要になってくるのです。

これはサービスに加え、コスト或いは彼らの為の居住空間にも影響を与えることになるのです。

主役であるクルーズ乗船客に充分に心配りが出来るような、船上でのホテル組織(乗組員) とクルーズ乗船客の比率も重要な指標になります。その船上における、クルーズ乗船客とクルーの比率を、1.8 対 1 と、ラグジュアリー・クルーズの中では最大級のレベルを目指すこととしたのです。これは 新造船の従業員部屋の数 にも影響を与えるのです。

(8) 「日常的」滞在環境

クルーズ旅行に於いては、常にクルーズ船客・旅行者が主役です。

クルーズ客船は、船長や 従業員(乗組員)だけのものではない。クルーズ客船は、寄港地(目的地) での観光以外に、船上での ライフスタイルの滞在「体験環境」(旅の過程 = プロセス)が重要です。

その実現のためには、船としても、その舞台裏の演出が大事です。その舞台は、主役であるクルーズ船客層の共通の文化的・ 社会的背景、すなわち「日常的」ライフスタイルが、常に反映されたものでなければならない。ク ルーズのような滞在型の旅には、「非日常的環境」は無理があり、長続きしないし、堅苦しく飽きが来易いのです。

気楽さと時間などに追われることがないことが重要で、クルーズ客船会社が絞り込んでいる客層の中で、船上での多数を占めるクルーズ船客の国籍や文化的共通性をベースにしたものになるのです。

旅行商品をつくる立場のクルーズ会社としては、彼らの対象とする客層のライフスタイルを充分理解した上で、構想を練る必要があります。

ラグジュアリー・クルーズ・マーケットに於けるクルーズ旅行商品の革新には、クルーズ客船会 社に、クルーズ客層を合わせるのではなく、客層や客相やその傾向に合わせて、クルーズ客船会社 が、ライ フスタイルの「時代の先取り」をする先見力が求められる。

アメリカ船客を客層とするクルーズ会社から見ると、アメリカ人旅行者にとって は、クルーズ客 船上での生活は、英語が通じ、食事も娯楽も、アメリカでの生活そのものであり、まさに”日常” の状況を、海上・海外にまで延長したに過ぎない(これは、日本では“非日常性”となる。クルーズ に対する見方も文化的価値観に基づく一例と言えます。

アメリカ人ゲストにとってクルーズの魅力は、アメリカでの日常生活舞台をそのまま外国に延長し、その上で、新しい国々や異国を訪ねること。

それに深夜まで、食事とかエンターティメントを楽しんでもその間も船は移動しており、翌朝は、新しい観光地に着いていることなどが、クルーズ旅行の醍醐味なのです。

その意味では、クルーズ会社は、このアメリカにおける日常性を前提に舞台回りを設営してきたのです。寄港地に着いて陸にあがれば外国で、船に戻れば、アメリカが在る舞台です。

アメリカ人旅行者を対象としたクルーズ客船が、アメリカ的雰囲気に溢れているのは、これらの要素を運航会社が理解した上で舞台づくりをしているからです。

クルーズ会社は、滞在型休暇の宿命として、この様に船上で大多数を占める船客の国民性や文化性が前面に出た旅行商品であるとの現実を無視し、クルーズ客船運航会社が自らの”主観的経営哲 学”だけで事業を始めてもなかなかうまく行かない場合が多いことを、過去の経験から学んでいるのです。

クルーズ乗船客は、1 人 1 人が異なった価値観に基づき旅行を楽しんでいるが、クルーズ客 船会社としては出来るだけ最大公約数的基準を設定し、潜在的船客需要が何処にあるのか十分事前に調査し寄港地、行き先、船上でのクルーの構成、サービス方法、食事、催し物を考えながら、船自体の建て構え・雰囲気を備えた舞台づくりを心掛けていたのです。

クルーズ旅行はこのような多数を占める国籍のクルーズ乗船客を主役としたエンターテイメントショービジネスであると言っても過言ではないと思われます。

(9) パッセンジャーミックスとクルーズ・マッチ

クルーズ乗客船は、クルーズ旅行者のライフスタイルの延長線上に存在します。しかし、クルーズ乗船客の客層によってクルーズ客船と言う舞台装置、つまり滞在環境は 全く異なっったものになるのです。

クリスタルクルーズ社はアメリカの将来対象とすべき、クルーズ乗船客のライフスタイルの分析に、多くの時間を費やしていたのです。陸上のゴルフクラブや社交クラブの場合、その入会金として、入会料を貰う事によって、会員などのセレクションが可能であろうが、クルーズ客船は、そのような方法は採用できません。

船上のライフスタイルが、ゴルフのカントリー クラブのような雰囲気であっても、それは閉ざされた会員だけのものではないのです。すべてがアメリカの消費者マーケッ トに対してオープンなのです。これとの関連で下記の面から検証が必要になるのです。

一つは、この様な対象とされたライフスタイルを持った、同じような価値観を持つクルーズ船客にとっては、クルーズ乗船客同士の居心地がよく、お互いの社交や 交流も活発になるのです。これがクルーズ客船社の滞在環境に良い意味の刺激を与えます。これが人と人との織りなすケミストリー、お互いの相性のベストマッチングが重なって、より快適な滞在環境が出来上がるのです。

プリンセス・クルーズ社のアイランド・プリンセス号船上での出来事をテレビドラマ化した「ラブ・ ボート」は、船上で起こる人と人の出会いのをロマンチックに描き、アメリカで長期間の人気番組でした。このような船上におけるクルーズ客層の心地よい交流には、 クルーズ客船の特徴を捉えることが必要になるのです。まさにヒューマンビジネスと位置づける事ができ主役は常に乗船客なのです。

一方、全く異なった価値観を持ったクルーズ船客が、異なったコンセプトをもとにでき上がったクルーズ乗客船に乗ると、不快な事も多く、滞在型の休暇を台無しにしてしまうモノです。

どのクルーズ客船に乗船するかは、その旅行の楽しみ方にも影響を与えます。なぜなら、一度船に乗ってしまえば、船の雰囲気が違うといって、簡単に下船するわけにはいかないし、予定の変更も不自由になりかねません。

それゆえ、乗船客とクルーズ客船のミスマッチを避けなければならないのです。

ラグジュアリー・クルーズ客船会社は、販売ネットワークの核を成す旅行代理店などに、

「自らの絞り込んだ客層は、そのようなイメージなのか?」

「滞在中の生活環境は、他社に比べて何が違うのか?」

など、営業企画面や運航面における特徴を前面に出し、試乗など乗船活動を活発化し、その違いを具体的に知って貰う必要があるのです。

クルーズ旅行経験者・旅行代理店等を新会社の味方につけ、彼らの顧客と新会社のクルーズ旅行商品との相性を理解し、適切なクルーズの相性探しというシステムを構築する必要があるのです。

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イギリスのクルーズ市場

ロンドンの外港サウザンプトンに停泊中のクイーン・エリザベス

日本ではクルーズ元年といわれた 1990 年前半クルーズ人口と近いレベルで推移していたイギリスは、今や年間、150 万人(2008 年前年比、11%増。日本:83 万人) のクルーズ客を擁するクルーズ送客国になりつつあります。

内訳は、イギリスを拠点とした近距離クルーズ旅行者が約60 万人、航空機を利用して、 アジアや南太平洋なども含めた遠隔地におけるクルーズ乗客は、90 万人となっています。

この島国、イギリスのクルーズの発展の過程を考えると、日本やアジアの将来も読めるヒントが隠れているかと思われます。

クルーズは運航会社の観点で見ると、寄港地選定と集客マーケットの 2 つのマーケットが存在します。この2つの観点は、密接に連動しながらクルーズ市場を広げています。

配船先を決める配船先や寄港地選定は1〜2年前から誘客策を検討します。配船先を決める際に、寄港地がクルーズ愛好者たちが訪問したいと思う好奇心に応え得るかどうかが大きな判断への影響を与えるのです。

クルーズ運航会社は、配船先や寄港地の選定計画は、 自らが抱える客層やリピーター、販売網である提携先である大手の旅行代理店網などの動向や、現地における受け入れ体制など、インフラの検証などを通して決めることになるのです。

配船先は、クル ーズ運航会社の営業的な成否を掛ける生命線でもあります。

最近のイギリスのクルーズ市場の急激な伸張は、この配船先として、アメリカ船による、ヨーロッパ・地中海 配船による影響が大きいと思われます。

配船先のマーケットとして、イギリスの諸港は、ロンドンという空路のロジステックスの 優位性を前面に押し出し、ヨーロッパにおける地勢的な優位性を認識。早い時期から配船先エリアの中で、それぞれの役割を理解しクルーズ産業の成長を考えていたのです。

例えば、大陸に面するドーバーは、ヨーロッパの EU 化の動きに早くから対応をしたのです。

当時、ドーバー港は、対岸にあるフランスのカレーやベルギー諸港などへのフェリー船の基幹港として隆盛を誇っていました。しかしEU 化の動きの余波でフェリー運航会社が、その収益源で有るデューティー・フリー・ビジネスが消滅する動きに危機感を覚え、早くから対応を決め込んでいたのです。

彼らは、1990 年代初めから、夏のヨーロッパの用 遊を基本としていた、アメリカのラグジュアリークルーズ船社に対して、北欧クルーズ拠点としての優位性を説いていたのです。

クルーズ客船社の北欧クルーズのホームポートとしての売込みを行い、南のサウザンプトンは、タイタニックの時代から大西洋横断クルーズの拠点や北欧から南欧クルーズへの季節の変わり目のポジショニングクルーズ での拠点としての売込みを行っていたのです。

これが、ラグジュ アリー・クルーズ運航会社のみならず、船腹過剰気味の北米の後発のプレミアム・カジュアルクルーズ客船社運航船社(比較的大型船型が多いことにの関心を得たのです。

このような背景で、多くのクルーズ各社が、本来の北欧クルーズであっても、 イギリスをホームポートにして運航しているケースが多いのです。

その結果、イギリスを起点にしたクルーズは、空路での移動を伴わないイギリス人乗船客が多数乗船している。外国船、特にこの場合アメ リカのクルーズ客船を、イギリス近海に誘致する努力が結果として、 イギリス人クルーズ客の増加に貢献してます。

ロンドンにはヒースローとガトウィック2つの国際空港が存在し、国際空路のハブ空港としての機能はロンドンから地中海などへの空路による移動を容易にしているのです。

アメリカのクルーズ会社は、この様なイギリス人船客に対して、航空会社との提携などにより、新しいフライ&クルーズのコンセプトを導入。そして新しい運賃体系を確立し、 誘客策を展開しているのです。

イギリスのクルーズ集客の観点から、言葉の問題や食事などのライフスタイルの事を考えるとアメリカ人ゲストの多いクルーズ客船は英語が通じ、食事もそれほどの違和感がありません。

アメリカのクルーズ客船にとってカナダを含めてイギリス、オーストラリアの3ヶ国の英語圏クルーズ乗船客が、国際客層の中心となっているのです。

統計などから、イギリスのクルーズマーケットを掘り下げていくと、その特徴として、フライ&クルーズが多いが、地中海&黒海で年間約45 万人、カリブ海エリアは約20 万人送客しているのです。

さらに「タイタニック」などに見られるような、彼らの潜在的な昔から大西洋横断の願望やアメリカと言う寄港地(観光地)の魅力もあり、大西洋横断クルーズのポジショニング・クルーズとして年間約4万人強のクルーズ乗船客を送り出しているのです。

寄港地してのイギリスの地勢的な優位性が、アメリカのプレミアム、カジュアルマーケットを対象としたクルーズ客船社の参入で、サービスや選択肢が増えた事により 当然クルーズ期間や値段にも多様な選択肢が、大きく貢献している事が伺えます。

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