航空料金の価格破壊

11990年代のアメリカ航空業界の規制緩和は、流通ネットワークである米国の旅行会社に大きな影響を与えました。
旅行商品の販売ネットワークの中核をなす旅行会社の仕組みや、そこで働くスタッフの対応に変革を迫られたのです。
航空料金の自由化により、搭乗客には多くの選択肢が増えたは良いものの、その顧客対応する旅行会社は、料金が日々変化する航空料金や同じ路線でも航空会社によって料金が大きく異なることで混乱を招いたのです。
さらには旅行者を囲い込むために各航空会社が導入したマイレージ制度により、顧客対応が煩雑になっていたのです。
多くの旅行会社は、航空券の販売に、多くの時間を費やしていました。当時のCLIA(クルーズ客船国際協会)の調査によると、1回の予約に約45分かかっており、非効率的であったのです。
また、料金も競争により低下し、低水準で推移した。
1990年代にはIT化によってコスト削減、旅行会社に支払われる販売手数料に上限が設けられ、利益率が大幅ダウン。航空券の販売は旅行会社にとって採算が合わないビジネスになってしまったのです。
新しい技術への設備投資が行われる一方で、顧客と顧客をつなぐ店頭販売網である中小の旅行会社の体力は、減収が続く中で急速に低下し、航空券のみの販売から、より利回りの高い旅行商品の販売に移行する傾向にあった。
規制緩和による事業環境の激変に戸惑う販売網に対し、米国のクルーズ船運航会社は、クルーズ客船国際協会(CLIA)の設立を通じて、数々の新たな挑戦を試みたのです。
航空料金価格破壊の打開策
CLIAは、米国独占禁止法上のリスクを回避するため、クルーズ市場の拡大に主要な活動を集中させた。
CLIAは、新造船が就航するたびに、新聞やテレビを通じて、他の旅行形態との比較やその価値、クルーズの料金体系、下船後の満足度、新しい旅行形態を理解してもらうための「試乗」などを紹介し、市場の活性化に着手したのである。
また、「クルーズバケーション月間」など、クルーズ旅行の認知度を高めるために、主要雑誌やメディアを通じて全国的なプロモーションが数多く展開されたのです。
これらのプロモーションの多くは、クルーズ旅行はいかに満足度の高い旅行であることを前提に、旅行会社が販売しやすい商品として売り込まれたのです。
また、クルーズ会社で予約した旅行者には、クルーズ料金と航空券を組み合わせた「フライ&クルーズ」というを新たな商品を導入。航空会社もクルーズ会社とコンタクトを取らなければ成立しないような商品もあった。
この効果は特にアメリカ内陸部の中小旅行会社に顕著に表れたのです。組織化しようとする多数の旅行会社も、複雑な航空券の手配から解放され、新しい顧客層を開拓することにもつながった。
CLIA加盟のクルーズ運航会社は、航空券の販売などに苦労していた多くの中小旅行会社を囲い込むことに成功し、新しいクルーズ乗船客を獲得することができたのです。
また、CLIA会員各社は、旅行会社スタッフに「クルーズ試乗会」と称する特別なクルーズを積極的に企画し、旅行会社の担当者にクルーズ体験してもらったのです。
下船後、旅行会社は自分たちの常連客を中心に、従来の飛行機を使う旅行とクルーズ旅行との違いを伝えてもらうこと、つまり「口コミ」に一番期待したのです。
零細旅行会社を救ったクルーズ業界

実際、クルーズ会社の業界担当者によるクルーズ試乗会を開催しつつ販売網を拡大。特に地域密着型零細旅行会社のスタッフの販売活動が、その後のクルーズ市場を支えていくことになるのです。
一度試乗をクルーズを経験した旅行会社は、その満足度について高い評価を与えることが多く、これらの旅行会社は先客にその経験をアピールするようになリマした。
販売すべき商品は、まず販売する側に知ってもらわなければならないのですす。このクルーズ試乗会は成功したのです。
しかも、クルーズの商品は、クルーズの目的地だけでなく、長期滞在中の船上滞在体も重要な要素です。
船上での体験の部分は、乗客の満足度と密接に関係しています。
つまり満足度が高ければ、またクルーズを体験しに来てくれる可能性が高くなり、リピーターヘと繋がるのです。
個人事業的な零細旅行会社も、徐々にクルーズ旅行の楽しさを理解し始め、クルーズビジネスに精通しつつあったのです。
彼らはクルーズという商品をよく理解し、何よりも自分自身が体験しているからこそ、自分の抱えている顧客に説得力のある説明ができるのです。
クルーズ船は、陸上のホテルと違って、クルーズ旅行のベースとなるパンフレットがあり、予約受付のシステムも明確。
ホテルと違って部屋などの割り当て販売なので、パンフレットで選んだオーシャンビューの部屋と、実際にクルーズ船に乗船したときのオーシャンビューの部屋のイメージに違いがありません。
ホテルの場合、実際には宿泊してみないとわからないことが多々あります。
クルーズは事前に自分が希望する客室を指定することが可能です。
このようにクルーズほど中小、個人事業的存在の旅行会社にとっては販売しやすい旅行商品に発展していったのです。
当時ラグジュアリークルーズの代表的存在であったロイヤルバイキング社(現在のバイキング・クルーズライン)の場合、当初のクルーズ市場は、何度もクルーズに参加している乗船客が中心でした。
その「リピーター」をいかに増やし、何度もクルーズに足を運んでもらえるようなフォローをするかが勝負だったのです。
ラグジュアリークルーズの場合、あるサービスに特化することでリピーターを増やす必要がある。
そのため、船内ではサービスや食事がこれまで以上に重要視されたのです。
これまで高価な商品というイメージが強かったラグジュアリークルーズ市場には、多くの「リピーター」が存在します。
彼らはこれらのクルーズ商品を熟知しているので、接客に要する時間は短いのです。
またクルーズ運賃は、フライ&クルーズとして航空運賃とパッケージになっているケースが多く、販売価格に対する旅行会社のコミッションは、航空券の販売だけよりもはるかに有利でした。
航空業界発展に貢献したクルーズ

このような背景から、クルーズビジネスの仕組みを理解し始めた旅行会社ネットワークは、次第にハイエンドなクルーズに目を向けるようになったのです。
各旅行会社が送り込んだ乗船客が乗船中に船内で予約できるシステムを提供することで、船内予約をコミッションとして旅行代理店に自動的に還元することにも成功。
この船内予約システムによって、これまで旅行会社は、初めてクルーズに参加されるお客様には数分、2回目のお客様には15分かかっていた予約を、わずか数分で1回分取ることができるようになり、クルーズビジネスの将来性を実感したのです。
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