【クリスタル・シンフォニー】船上の本格和食レストラン

スペシャルティーレストラン『シルクロード&寿司バー』

NOBUこと松久信幸氏プロデュースの創作和食や寿司をお楽しみいただけます。

日本料理をベースに南米やヨーロッパのさまざまな料理の要素を取り入れた、新感覚の創作和食や、新鮮な素材にこだわった寿司をご堪能いただけます。

NOBU(松久信幸氏)略歴
アメリカの雑誌「フード・アンド・ワイン」で全米ベストシェフ10 人に選ばれるなど、
世界的に高い評価を得ているシェフ。

日本料理にユニークなアイデアを盛り込んだ独創的な料理を手がけ、日本をはじめ、アメリカ、イギリス、フランス、香港など世界中に店舗を展開しています。

ニューヨークで大人気のノブ・マツヒサ氏による、創作日本料理が世界中の洋上で気軽にいただけます。お寿司などの純粋日本料理の味は折り紙つきで、そのためにとても人気があります。

今回は「クリスタル・シンフォニー」の「NOBU」プロデュース創作和食レストランをご紹介します。

上の写真は英語メニューですが、オーダーすれば日本語のメニューも持ってきてくれます。

内装はむらさきを基調とし、かなり落ち着いた雰囲気です。

カウンター席は予約なしでOKですが、先着順ですので、開店と同時に満席になります。

特に日本人乗船客が多いと、予約を取るのが困難です。

乗船日初日から満席でした。

このNOBUの人気ぶりが日本人よりも欧米人からの支持が強いということがわかります。

それではさっそくオーダーしました。

まぐろのたたきサラダ・マツヒサ風ドレッシング添え

NOBU定番料理のひとつ、シーフードのセビーチェ(南米風酢の物)です。

「酢の物」というよりもレモンの酸味とハラペーニョの辛味がやみつきになりそうです。

サーモンとほたて貝のニュースタイルサシミ

お刺身が苦手なアメリカ人になんとか日本の刺身を美味しく召し上がっていただきたいというNOBUさんのアイデア料理です。

いまやNOBUの超人気メニューのひとつです。

しめじの味噌汁
お味は本格派。もちろん日本人の口にも合います。

メインディッシュのロブスターの柚子ソース炒め
ローカロリメニューですので、ダイエットを気になさる方にも自信を持ってお勧めします。

銀だらの西京焼き、山もも添え。

山ももは静岡県伊豆地方から取り寄せるそうです。
NOBUレストランのオーナでもあるハリウッドスター、ロバート・デ・ニーロ氏もお気に入りの一品です。

大トロのにぎりすしです。日本人シェフが握りました。

海老の天ぷらクリーミースパイシーソース。

つまり天ぷらのマヨネーズ和えです。欧米人が好き好んで注文をします。

最後の締めはシメサバのにぎり寿司です。

デザートはシトラスカスタードプリン。

緑茶と一緒にいただきました。

まん中はチョコレート、右はゴマの甘いおせんべい。和のプチフールみたいです。

その後、航海日の半分はこの和食レストランに通うことになります。

メインダイニングでのお食事前に、軽く寿司をつまんだり、ディナー後の二次会的な役割でまるで「居酒屋」感覚で利用できます。

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ワインが主役のレストラン「ビンテージルーム」

ラグジュアリークラス客船「クリスタル・セレニティ」(Crystal Serenity 68,000t)には世界中から選りすぐったワインの数々をゲストにより親しんでいただくために作られたワインが主役のレストラン「ビンテージルーム」(Vintage Room)があります。

ソムリエが選んだ6種類のワインとそれに見合った料理を総料理長が特別に用意されます。それではヴィンテージルームに揃っているワインの一部をご紹介します。

ブルゴーニュの宝石ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ リシュブール[1995](RICHE BOURG) 1995

ワイン愛飲家の間でこの名を知らない方はいないでしょう。その香りは『百の花を集めてきたような』と形容されるほど。味わいはフルボディーで、木苺、スパイス、トリュフの香り。

信じがたいような華やかさと官能的なまでの艶やかさが産まれます。口当たりはなめらかで、ビロードのような舌触りが残ります。

シャトー ディケム( Chateau d’Yquem ) 1999

世界最高の極甘口白ワインである貴腐ワインです。生産地はフランスのアキテーヌ地方ジロンド県ソーテルヌ村です。よいヴィンテージのものは熟成に二十年以上かかるとされ、1855年パリの万国博覧会の際、ジロンド県産白ワイン部門の格付けで、これを凌ぐものはない最高級品ということで唯一「特別1級」に指定されています。

シャトー・シュヴァル・ブラン(Chateau Cheval Blanc)1993

ボルドー最高峰のひとつでサンテミリオンが誇る最も偉大なワインのひとつです。サンテミリオン第一特別級(A)の飲み頃21年熟成。しかもアロマのワインと言われる1993年ものです。

2010年のオークションで304,375ドル(日本円に換算して約3,400万円)の値を付け、「ボルドーワインの価格の記録を更新した」とか。「ボルドーワインをひとつ選ぶなら“これ”と言う人も少なくない」と大絶賛のワインです。是非一度お試しください。

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アメリカマーケット調査による最適人材の相性とは

クリスタル・セレニティの寿司バー。シェフとの話のやり取りが楽しい

新生クルーズ会社として、多国籍乗組員を採用する前にこれから参入するクルーズ事業の基本は、ホスピタリティありきでした。

その基本には先見性にもとづいた配慮を必要として、それを提供するための人的資源の担当の確保が、新会社の組織の維持と評価にとって、極めて重要な要因と理解していたのです。

当時、新会社クリスタル・クルーズの船上滞在環境の構築には、乗組員は重要な人的資源であるとの位置付けで有り、彼らが安心してその 経験や能力を発揮するためには、公平な評価基準を経営者側と共有する必要があると考えたのです。

サービス業のクオリティに配慮をしてラグジュアリーな旅行商品を追求する新会社クリスタル・クルーズの経営の基本に、人材は資本財的性格に重点を置きつつ乗組員の労働環境がよければ、彼らの魅力に惹かれたクルーズゲストがリピーターとなり、大きな核になる客層を形成したのはすでに実証されていたのです。

それがクルーズ会社の経営と発展を支えるという構図を描いていたのです。乗組員こそクルーズ船客に最も近いところにいるクリスタル・クルーズにおけるサービス哲学の「伝道師」でした。

彼らが日常の業務で満足度が高 ければ、クルーズ船客にも感動を与える良い環境が出来上がり、結果として、彼らの「満足度」を高めることになるのです。

快適なサービスを提供する為に、現場における明確なエンパワーメント(権限付与)が乗組員をして、目先の人事権を持つ社内の上司ではなく、会社における自分の役割に向けられると雇用の確認が人材の能力を鼓舞し続け、顧客に受け入れられ、クリスタル・クルーズ社に対して忠誠心の高いリビーター組織「クリスタル・ファミリー」の輪を広げる事になったのです。

クルーズ客船がターゲットとしている客層の文化的な価値観とか、生活体験から来ている価値観に基づいている限り、多国籍船員(従業員)の持つ多様性は、新たな刺激を与え、船客との接点にいる人材の能力を最大限に発揮できるような組織が求められていたのです。

50 カ国 500 人を越えるスケール(一隻あたりの乗組員)は、期間雇用契約に基づく期間雇用であるけれども、会社としての確たる雇用条件が、彼らの仕事をする喜びや忠誠心を生むものとなるものです。

クルーズ事業の基本は、「ブランドを創る事業」であり、その計画の第 1 ステージ (新造船就航までの期間)では、ブランド価値を連想させる仕掛け、一例としてロゴマークのデザインなどはすでに手を打っていたのです。

さらに旅行商品の視点から他のクルーズ客船会社とクリスタル・クルーズは違うということをマーケットや将来のクルーズ船客にアピールしなければならなかったのです。その差別化の理由も説明しなくてはならなかったのです。

マーケットへの的確なサインを送る為には、クルーズ客船建造計画や そのプロセスの開示といったコミュニケーション戦略が重要な役割を果たしていたのです。

その過程で、これから採用する新会社の人材の持つ評価やそれに加えて「ブランド 活性化戦略の策 定」過程における旅行代理店など販売網の参画を推し進めるのが良 いとの判断であった。

アメリカのクルーズ市場におけるブランド認知戦略にあたって、アメリカのクルーズ・マーケットにおいては、サービス・プロバイダーの主観ではなく、船客層に最も近いマーケット、旅行代理店などデストリ ビューション・システムや乗船主導型で動いていると各種の調査などで理解していたのです。

従って、難問にぶち当たっときは常に最優先項目マーケットに聞く体制の構築だと考えていたようです。主観的な、思い違いなどを起こしやすい提供者価値ではなく、客観的な受益者価値の理解が必要でした。

船が就航していない 2 年間という圧倒的に不利な条件の中、ブランド構築をするには、そのプロセスにおいて絞り込んだ客層や、彼らを主たるクルーズ船客として抱える旅行代理店にはこのプロジェクトに参画を促し、積極的に「フォーカスグループ・マーケティング」の投入など検証システムを駆使。時には軌道修正もしながら、 船上の滞在環境のプログラムの開発設計をしていったのです。

そこでは、人間的な要因を前面に出したより真似されにくいサービスシステムや船上組織のデフェレンシェーションでマーケットに訴えるのが良いとの方向で固まったのです。サービスや船上組織などソフトは人的な要因が強く真似されにくいのです。

サービス面での差別化こそクリスタル・クルーズの生命線でしたので、マーケットのニーズを先取り。クルーズ船客が中心に居る滞在環境を新会社の核にすることをひたすら試行錯誤し、船上プロダクトに関して下記の面から更なる検証を行う事とした。

1・ クルーズ船客と乗組員とが織り成すクルーズ経験価値。

2・船上での人間関係での優位性は(サービスを提供する側と受ける側の相性。

3・ 滞在生活上の安心感。ホテル部門における欧州ホテルスタッフの起用。

4・ 優秀な乗組員の確保の為には彼らの居住空間に充分な配慮満足度)。

5・ スタッフの能力の「予見力」啓発システムの構築。

6・宿泊・滞在価値を高める為に自前のプロダクションショーと食事に付いては豊富なメニューや複数のレストランなどの積極的な運用。

7・ 現場への権限を大幅に委譲して現場で問題を迅􏰁に処理できる体制の確立。

1988 年半ばには、この様な検証をもとに、既に船上における商品企画)が検討されていた。 この時期、マーケットに対して、アメリカのラグジュアリー・クルーズの世界で

「なぜ、クリスタル・クルーズが必要なのか?」

の答えには、旅行代理店や将来のクルーズ船客などに意見聴取なのです。

最上のサー ビスを実現するためには、競合他社のプロダクトのみならず、積極的に陸上のリゾートホテルなどのサービスも導入し、快適な船上生活体験環境の導入を目指したのです。クルーズ船客の居住空間の充実や部屋の大きさ等にも配慮したのです。

「なぜ、クリスタル・クルーズを勧めるのか?」

このような動機付けの模索も始めたのです。

旅行代理店の要望を絞り込んで販売しやすいプロダクトを構築。これは旅行代理店のフレンドリーさを強調したものです。そしてゲストに対する再検証により、マーケットを更に再び絞り 込む作業に力点が置かれたました。

覆面調査・フォーカスグループなどの分析を駆使したマーケットの絞込みによる と、当時の我々 日本人から見た統計では、最も憧れと親しみがもてるアメリカ人であっても、この様な調査を通して立場が変わるとその見方も違う事を知らされたのです。

本音と建前の違いもありますが、当時アジア人やアジアの文化などに最も遠いアメリカ人とも言えるユダヤ系アメリカ人マーケットでは、 一般のアメリカ人とは異なった反応があったのです。

彼らの多くは日本に対して特別好意的というわけでもなく、今でも真珠湾攻撃や太平洋に関わる戦争が製作されると、大きな ニュース(特に12 月 7 日は太平洋戦争記念日としてニュースで真珠湾攻撃の映像がアメリカでは終日流れる)として報道されている現実から、ユニフォーム姿の日本人には違和感を持っている人たちが多いことが見受けられるのです。

好き嫌いという感情ではなく、日本人乗組員のユニフォーム姿には、彼らがドイツ・ナチスに対 して抱くのと同様な異質な民族感情が存在しているのではないか、といった側面からの調査を行 なうことも怠らなかったようです。このような感情が、ドイツ船「オイローパ」などはアメリカの旅行代理店や船客の離反感情を生み、アメリカ人船客は皆無に近いと言われていたのです。

つまりアメリカの市場を把握できなかった結果でもあると伺えるのです。各客層の旅行動向を的確につかむ努力が重要であり、主要客層であるユダヤ人社会を徹底的に知り尽くすことで、彼らが望まないクルーズ商品を創らない努力も必要であったのです。

その後も、いろいろな局面で、ユダヤ系船客への反応には充分配慮をする必要が生じた。

2003 年 のイラク戦争では、ユダヤ系政治圧力やクリスタル・クルーズなどラグジュアリー・クルーズ客船の主流でもあるユダヤ系クルーズ船客のフランスに対する歴史認識や感情などが、徹底的にイラク寄りのフランスを悪者にした。

その状況下での第三船「クリスタル・ セレニティ」の就航では、造船所の代替えは出来ないが、女優ジュリー・アンドリュースをゴッド・マザーとした命名式を、イギリスに移し、その後の同船の地中海就航時も、カンヌやニースなどの南フランスの寄港を回避した模様です。

これも「マーケットに聞く」姿勢を保った調査の結果でした。

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ブランド構築と差別化

クリスタル・セレニティ(68,000トン)でのウェルカムパーティー

これから誕生するラグジュアリー・クルーズ客船会社にとって、この業界で成功を収め生き残る 為には、既存のクルーズ客船社との違い、すなわち、既存の会社の 真似をするのではなく、多くの革新的発想を取り入れて、その違いを差別化し、独自性の主張が重要でした。

新会社は、既存社の模倣ではなく、新しいコンセプトを至る所にちりばめたプロダクトにする必要があったのです。同業他社の真似をするだけでは、新規事業は、存在の意味を薄めることとなるのです。他社と違うことを実行しなくてはいけないのでした。

新􏰀船を建造するにあたっては、ハード(船)面に関しては、比較の対象とする具体的な「モノ」(この場合は客船) があったので基本的な方向付けや各種の技術革新の導入は、 新造船の設計段階から織り込み済みでした。

しかし、客船を基準にした差別化には限界があることも知っていたのです。新造船の多くの技術革新や構想も、この新造船が世の中に出る頃には、他の会社の新造船に真似され、造船所自体がその新しい技術を次の船に応用しようとする新造船(クリスタル・ハーモニー:現「飛鳥Ⅱ)のベランダ比率がマーケットで評判になるとすぐ、 他のクルーズ客船社も同じようなコンセプトの新造船を建造して北のです。ハード面における差別化は、クルーズ事業のような、ライフスタイルやファッション指向の強い旅行商品には持続性に欠け、すぐ飽きがくるのです。

そこで既存会社との差別化において、勝負は船上における「ソフトの中身やサービスなどを含めた滞在環境が全て。斬新にして温かみのある仕掛けを作ることが、この成功への鍵で有ると考えたのです。

クルーズ船客は、クルーズ旅行に、船上で の出来事、旅の持つ「プロセス =過程」に感動する。したがって、クルーズ船客自身が主役となるような船上生活を演出する必要があると考えたのです。

船上におけるサービスやソーシャルな環境のシステムを、いかに構築するかという新しい挑戦が始まったのです。

新しいクルーズ客船会社の船客にとって、快適な船上滞在環境を演出する為には 「顧客が何を望むか」を常に考える必要でした。

新しいクルーズ客船会社としてのビジネスモデルの構築を実現する ために、各種の調査を通して、ネガティブな要因を出きるだけ取り除き、彼らのライフス タイルを先取りする事に焦点を当てるようにすべく、基本的な考え方を整理していたのです。コンテンツやサービ スなどのソフト面では、トレーニングやマニュアルの質の向上を実現。船上でのサービスに加え、既存会社には無い「人との出会いやエンターティメント的要素が重要です。

その人間関係の織り成す要素をより重要視し、「クルーズ船客同士か、乗組員とのコミュニケーションの機会を多くすることで、既存のラグジュアリー・クルーズやそのコンセプトを超えることが大きな課題でした。 差別化を中心に置き、船上で出会う人の持つ能力とそのケミストリー(相性)を置くことなのです。

このクルーズ事業でもっとも大事な船上での滞在環境の構築には、オーナー側知識がほとんどなかったのです。その船上ソフトの構築や他社との差別化戦略には、この新事業に参画してきたフライデンバ ーグ副社長(当時)他、ロイヤル・バイキングクルーズ社出身者の経験などが非常に貴重でした。

彼らは、 仮想競争相手となるロイヤル・バ イキング社の客層と船上のプロダクトに精通している強みがあったのです。当時のクリスタルクルーズ社は彼らの経験と新鮮なイメージを融合させて、マーケットにインパクトを与えなければならなかったのです。その既存のクルーズ会社を熟知している彼らの経験を元に、米国クルーズ業界新参者としてこの業界に参入する新しいクルーズ客船会社は、ロイヤル・バイキング社 などの既存社との違いを明確にしておくことが必要だったのです。

セールス面で見ても、他社船に乗っているクルーズ船客の誘客も大事であるが、これから 創る会社の核になるクルーズ客層を確立するためには、この差別化の確立により、 新会社独自の客層を創出し、将来、囲い込むこと。そしてリピーターから、クリスタル・クルーズ社に対して忠誠心の高いファミリーメンバーにすることが、より重要であると考えたのです。

その実現のためには主要客層と定めたマーケットに対してサービス提供者としての”主観”を横に置き、忠実に「サービスの受益者であるマーケットに聞く」姿勢を徹底し、耳を傾け、既存会社にありがちな先入観を払拭しながら、彼ら のニーズを先取りするという事が重要であった。そのニーズこそ、忠誠心の高い顧客のライフスタイルなのです。そのライフスタイルに耐えうるような、クルーズ船客同士や乗組員等との生活体験環境を提供し、その中で船上での人間が織り成すケミストリー(相性)が「命」なのです。

このクルーズ事業を検討している時、投資者側から、船上のホテル部門は洋上のホテルみたいなものだろうから、日本の既存の有名ホテル(例えばホテル・オークラなど)との提携してはどうかと言う選択肢も提示されたのですが陸上のホテルとは大きな違いがあったのです。

議論もあったが、アメリカの現地会 社としては、この意見には全く納得できなかった。一方、陸上のホテルなどの場台、立地場所がその性格を決めるのです。その多くは、宿泊と食事+そして宴会等で構成され、ホテルの滞在客よりも通過客も多く、その舞台裏はクルーズ客船と全く異なっているのです。

陸上のホテルは、食材なども、その周辺環境の中で調達もできます。その点、クルーズ客船は長期滞在する旅行者に、寄港地観光と船上の滞在型のサービスを提供することを基本とする以上、船で移動中といえども船上で滞在中の食材などの調達は世界各地から取り寄せる体制となっているのです。

クルーズ船客にとっては、「宿泊や食事 、そして娯楽施設や会合機能を中心とし、全てが船上で完結するのです。たとえば、食事の提供も、船上で生活 する全てのクルーズ船客に、日替わり,時間替りの多彩なア・ラ・カルト・メニューで、 ク ルーズ船客を飽きさせない体勢が必須であるが、陸のホテルの宿泊客が、ホテルのレストランで何時も食事をする訳でもないのです。

彼らには、外食の選択肢もあります。またサービスを提供する雇用事情も大きく異なっていたのでした。

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クルーズ客船事業は社会心理学

クリスタル・セレニティ号でのガラ・ビュッフェ

時は1988年 5月、サンフランシスコでの旅行代理店等とクリスタル・クルーズのプロジェクト関連の話題に関して直接意見を聞く機会がありました。

この意見交換会での議論の多くは、アメリカ人乗船客に対する接客能力に関しての話てがメインだったそうです。

クリスタル・クルーズの経営首脳陣は、NYKが運航するクルーズ客船でもあり、何とか日本人幹部船員を新造船に乗せたいと強く思っていた。

しかし、サンフランシスコなどでアメリカの旅行代理店などの率直な意見を聞いているうちに、NYKの海務関係者の説得には、更に中立的な調査による分析が必要として、更なる調査を命じたのです。

1990年になって、アメリカとして客観的な調査を開始。

まずは新会社、クリスタル・クルーズ社の在り方。組織問題等の話題になりました。

日本とア メリカを駆使して、幹部国際船員の混乗や英会話力なども含め、アメリカのクルーズの販売の前線にいる旅行代理店網やクルーズ乗船客。

特にラグジュアリー・クルーズの主客層であるユダヤ系アメリカ人乗船客などの「本音」を聞く事にしたのです。

主観的な議論を避け、できるかぎりアメリカマ ーケットに聞き、彼らの見方・客観的な分析との対応を優先したのです。

アメリカ市場が最も求めるプロダクトを作らねば生き残れない事を当時のクリスタル・クルーズの幹部は知っていたのです。

旅行代理店や乗船客の見方・価値など買い手価値をどれだけ実現できるか?

この事業で生き延びて、アメリカの起業コンサルタントなどとの接点を通して、この事業を成功させるため残る鍵であると感じていたのです。

先ず、販売網である旅行代理店などのマーケットの反応を調べる事とした。

アメリカでのクルーズ客船の集客は旅行代理店を中心としたデストリビューション・ ネットワークに依存している以上、仮に彼らの意見がきわめて偏見に満ちて溢れていたのです。

就航実績のないクリスタル・クルーズの現状下では黙って謙虚に聴くしか方法はなかったのです。

調査で、旅行代理店からは以下のような多くの厳しい質問が浴びせられました。

・日本郵船の日本人幹部船員の語学対応およびクルーズ客対応能力については一切判らないが、在米日本人駐在員等や家族との接触などから推察すると国際レベルで中以下ではないのか?

・ノルウェー人船長と一緒に働くと言うが、緊急時にノルウェー船長の指示に基づき、自分たちが 送り込む)アメリカ人クルーズ船客に迅速に対応できるのか?

・クリスタル・クルーズは、ラグジュアリー・クルーズとは言っているが、乗船客を初めての試み(日本人とノルウェー人上級船員の混乗)の「実験台」にするとはどういうことか?

以上、旅行代理店の多くは、貨物船の経験と接客が重要視されるクルーズ客船とでは、安全運航への対応がまったく異なるのです。

そのコミュニケーション能力が重要ではないかと、緊急時の 日本人幹部船員のランゲージ・コミュニケーション」能力はどの程度かをとりわけ危惧していたのです。

まず、新会社の在り方、組織問題などの話になりました。

文化や価値観、考え方が日本とアメリカの溝を埋める方法を模索されていたようです。

例え話としてコンサルタントから得ていた情報などを元に、アメリカのメジャーリーグの野球チームの組織などの話をしました。

球団経営とその現場である野球場での監督選手の行動責任などの明確な分離について首脳陣に話したのです。

現場の監督が活動しやすいように、現場の選手に対する差配は球団はしない。 しかし、勝負の結果に関しては、契約を元に口を出すといった、棲み分けを明確にする必要がある のではないかとお話をしたのです。

販売網である旅行代理店には、アメリカ人幹部などのノウハウや経験を中心に置き展開することが必須条件でした。

彼らが、ある程度自由な判断で活動できる環境が重要ではないかと言う意図でもあり、乗り出し時は、ブランドが確立するまで、NYKというの会社のブランドより、アメリカで採用した欧米の幹部経験者の力を優先する仕掛けではなかったのかが懸念材料でした。

このプロジェクトの素案創りの段階から、アメリカ市場を前提にすれば知識も経験も少ない投資家側の主張よりも、「郷に入っては郷に従う」仕掛けが、重要だったのです。

日本には、NYKや他の会社が築いてきた日本の常識やスティタス・歴史は有るだろうが、この事業は、アメリカで展開する以上、投資家であるNYKが、アメリカの仕掛けに あふ程度任せる寛容さが無ければ、将来もこの異文化の軋轢は残り、上手くいかない可能性が高いと思われたのです。

ここは日本の常識を超えた、新しい世界基準に基づいた組織や仕掛けを考えるのです。

このような日本の常識が、世界基準では必ずしも受け入れられていないことを経験的に理解していたのです。

この会社経営に横たわる日米間の考え方の違いに加え、日本郵船が採用した「便宜置籍船」を基にした新会社の船舶運営やこのところ顕在化していた日諾幹部船員問題についても話をすることが出来たのです。

しかし、他のアメリカの有力クルーズ会社の経営から得た知識を元に議論すると、この事業 は、クルーズ先進国やマーケットを攻めながら、新しい会社としてのプランドを創る必要があったのです。

投資家である日本郵船の自社都合で、マー ケットの意向と対立することは、全くゼロから始める会社にとって本末転倒ではないのかと思われていたようです。

今回のNYKの英断である便宜置籍船の持つ特性を最大限に活用して、他社の追従を許さぬ地位を確立するという発想があったのです。

その実現のためには、この業界で経験が豊かで、ラグジュアリー・クルーズの基本をなす幹部人材に対するアメリカの販売網の評価が高いノルウェー人幹部船員たちの経験を軽視・無視する考えは成立しません。

彼らの経験を最大限に使い、それに更なる革新を加えて、既存の船社に対抗する戦略が賢明かと思われたのです。

新造船や建造や営業開始等、時間的な要因を考慮して、アメリカクルーズ業界にて未経験である以上、我々の置かれている立場を謙虚に理解するしか他に無かったのです。

米国クルーズ業界で最も評価の高いといわれるノルウェーの幹部船員を核にして、この事業を乗り出し、NYKとしての日本人幹部船員の登用については、5〜10 年後を目処に見直すことも可能にする方法もあったのかも知れません。

NYKの運航部門が熱意を持って、世界に通用するクルーズ会社の運航を主導したいと主張しているのであれば、具体的な目標を立て、幹部船員候補生に積極的に、他の欧米の客船での長期研修やアメリカ社会にどっぷり浸かるような長期英語・文化研修制度を導入する事なども考慮すべきかと思います。

このアメリカや世界の最高レベルでのクルーズ事業の挑戦が今後も続くという事であれば、クルーズ客船向け幹部船員の養成に関しても、日本郵船として、抜本的な体制を検討する必要があるのではないだろうかなどと議論したのです。

明治時代に、NYKが日本で始めて外航海運を始めたころ、航海に対する知識が無かったそうです。

その窮状を解決するために、イギリス人船員などに任せたエピソードがありました。

同様にクルーズも、運航面以外の多くの船上における業務や乗船客との交流を考えると、将来を見て、じっくりした対応が必要かと思われたのです。

乗船客とそれを接客する船上の幹部船員との関係は、社会心理学のケミストリーの世界だと実感したのです。

ラグジュアリークルーズ事業は、高いクルーズ料金にもかかわらず、自前で、船上での滞在中の時間を楽しみを求める乗船客で成り立っているのであって、それを満足させる仕掛けが不可欠なのです。

乗船客の大半は、アメリカでの生活形態の”日常性”をそのままクルーズ客船と言う滞在空間に持ち込み、その環境で世界を周遊する人たちなのです。

彼らの日常の生活において、彼らの交流の基本である言葉の問題(英語)などで苦労があってはならないのである。使い勝手の利便性などで、相対的に判りやすいモノの価値観とは異なり、船上で経験するソフトや コンテンツには、それに参加する乗船客の主観的意向が働きやすく、まさに人間関係が織り成すケミストリー(相性)の世界なのです。

企業側の”主観的な”判断や経験で良いと思って も、対応される乗船客の主観は別のところにあるのです。

彼らがクルーズを楽しむために用意した旅行資金を、新会社のために使ってくれるかどうかは、彼らしか決められないからです。

世界を舞台にしている日本郵船の幹部船員も、この分野においては全く素人であり、言葉の問題 に加え、この経験不足は即戦力を活用し、世界基準の実現には、時間が掛かりすぎたのがネックだったようです。

マーケットや相手が何を考える かを予見して、出来るだけネガティブな環境を避ける舞台づくりを優先せざるを得ないのでした。

より客観的なデ ータを下に議論を詰める事にしていたが、その多くは「船も就航していない段階で、サービスの実績を示す前にイメージだけで不要な先入観を商品開発の過程で入れないほうが良い」と言うのが、PR 会社や各種の覆面調査を経た旅行代理店や将来の潜在的な乗船客の意見でもあった。

当時クリスタル・クルーズは、まだスタートしていないのでした。

理想は日本郵船の船長が前面出て、接客の面でも堂々とアメリカ人乗船客とやりあえて、ノルウェー人幹部船員などを自由に使えればよいのであると思案したこともありました。

しかし、当時のアメリカ人幹部が、日本から出張してくる 船員などとアメリカ人幹部との日常会話などを通して、現在の「英語力」「会話力」 では彼らは残念なが ら納得しなかったのです。

戦前の日本郵船の欧州航路の客船は、行き先が決まった日程で、そこに辿りつく事が最優先されていたのです。

そのためには、船上の会話や滞在環境などよりは、目的地に少しでも早く着くことが最優先されたのである。

それに対して、自分のポケットマネーで好きなことを自由に楽しみ、時間に対する満足度が勝負の現代的なクルーズとは全く目的が異なったものでした。

ここに、戦前の日本郵船の客船と戦後の周遊を目的とした「時間を買うクルーズ」との違いがあったのです。

「その第一番に乗る日本人の英語力などが今問題になっているのです。

まずは第一船の事業展開を成功させなければならなかったのです。

次の段階として第二、第三船も建造し、就航させてこの道で成長することを望んでいたのです。

乗船客のニーズを満たし、同業他社との競争に勝ち残ってこそ、未来を開けてくるものです。

これら現実を前に、日本郵船本社も決断した模様でした。

船上の組織、特に指揮系統に関しては「マーケットの要請」を受け入れ、ノルウェー・システムすなわちノルウェー船長の下でノルウェー副船長と日本人副船長を配し3 人の船長体制を構成し、機関部についても ノルウェー・システムを日本人幹部機関員が補佐する体制が出来上がったのです。

また日本郵船から派遣されるクリスタル・クルーズの海務担当執行副社長は経営・監督業務に専任する事になったのです。

この方向性に関してはクリスタル・クルーズのアメリカ人幹部も全く異論が挟めなかったのです。

新規事業の立ち上げでもあり、これからの事業の方向性と自分たちの置かれている状況を、客観的に見詰める事が重要であり最初のボタンの賭け違いを何としても避ける必要があったのです。

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クルーズの究極の在り方

ベニスに入港する「クリスタル・セレニティ」

理想的かつ究極の船上滞在環境のを求め、プロセスを重視するホスピタリティ事業では、旅行者との接点は、常に「ヒト」が中心でなければ成立しません。

クリスタルクルーズ社がラグジュアリークルーズ客船の業界で認められるためには、船上での滞在環境を構成する「ヒト」にフォーカスし、クルーズに乗船する歓びを体験してもらうためには「船上での商品開発」が決め手です。

クルーズ旅行に参加した思い出は、旅行者の脳裏に刻まれ、永遠の旅の感動を創ると思われます。そのためには従来のラグジュアリー・クルーズ客船会社の真似は避けたいと思われていました。

船上でのコンテンツを構成する食事や娯楽のみならず、個性に溢れる多国籍クルーの採用も含め、彼らの持つ多様性や独自性を積極的に露出して、新会社が絞り込んでいるクルーズ客船マーケットに、常に100%以上の満足を提供できるような仕掛けが必要であったのです。

長期間に渡る各種の事前調査が生かされ、クリスタルクルーズ社が狙うべき客層から、顧客のライフスタイルに対する分析は出来ていたのです。

それを前提でクルーズ乗船客が、クルーズ旅行に求めるものは、 Ship(船)・Service(サー ビス)・Social(ソーシャル = 社交)に加えてRomance(エンターテイメントを含めた食後の環境)であることです。

クリスタルクルーズ社の主対象とするラグジュアリークルーズマーケットでは、彼らのライフスタイルが所以となる船上での「サービス」と「出会い」に非常に大きな期待を持って乗船してくる人たちなのです。

ゲストの船上における体験価値の評価においては、この「サービス」と「出会い」が、非常に大きな影響を与え、この 2 つの分野でその舞台の仕掛けを考える必要があったのです。

その舞台では、船上で共に滞在を楽しむ「ヒト」とクルーズ乗船客とサービスを提供する側に居るクルーが、密接に交流して創られる環境でもあります。

対象が「ヒト」である以上、船上での舞台装置には、船上での人間関係がサービスをされる人たち同士のケミストリーとサービスをする人とされる人の相性、そして多国籍船員を中心としたサービスをする人たちの適性などの密度が豊かな「船上滞在体験」向上の要であると理解していたのです。

(1) クルーズ旅行の主役は「クルーズ船客」 :顧客のライフスタイルを知ること

長期滞留しながら船上生活を楽しむ多くのクルーズ乗船客にとって、その「ライフスタイル」と言う基準を通して、快適な人間関係が創られる事が望ましいのです。

確かに、 モノを買うのも旅の楽しみの一つであろうが、クリスタルクルーズ社の想定していたアメリカの客層にとって、究極の旅とは「旅の過程を大事にし、その体験を心に刻むこと」であると考えたのです。特に、彼らは夫婦の 場合、その体験を通して、 人生の足跡を「同期化」することにより、夫婦の喜びや失敗も共有できるのです。

ラグジュアリークルーズの乗船客は、船上での滞在生活の中に、人生の「物語」を求めているのです。 思い出を心に刻みたいと思っているのです。記憶に自分自身の人生の価値や感動を刻む仕掛けが、 クルーズ乗船客から与えられた至上の要請でなのです。

その実現のためには、彼らの船上におけるライフ・スタイルに最大限に配慮、言い換えると「乗客の世界を知らずして、心配りはできない」ということ理解をし、クルーズ旅行の中心に 「クルーズ乗船客がいる」という、船上での“舞台”を演出することが必要でした。

船上で彼らが持つライフスタイルや生活や文化と船上で提供する舞台装置の融合する仕掛けが成功の可否を決定するのです。

「サービス」という船上のプロダクトの評価は、多くは「人的要因」で左右される傾向が強いのです。 相性がよければ、訴求力もあり永続性が高いのです。したがって同業他社よりも優位に立つためには、この 「人的要因」に的を絞り、 アメリカ人乗船客のライフスタイルを理解してクルーズ船客 と船で働くクルーとの相性を強化することでした。

クルーズ乗船客との関係においては、人間関係を基本としたサービスを提供すること、それがホスピタリティサービスの基本です。

これがゲストとクルー双方の 信頼関係や相性で成り立つものです。クルーズ船客は、自らの支払うクルーズ料金に対して、クルーズ会社からのこのケミストリーとそれ相応のサービスの提供に「期待」を込めているのである。

「ソーシャル(社交・人的交流)」についてみると、船上における「ヒトとヒトの織り成す人的な要因つまりケミストリーです。それもお互いのライフスタイルが理解できる客層同士が、その宿泊・滞在経験価 値の核をなすのです。

従って、新会社として、この事業を長く続けるためには、先ず 「ソーシャル」の分 野で他社と大きな違い・特徴を生み出そうと考えていたのです。この充実度が、将来の戦略の核となり、他社 との差別化で決定的な差となると思えたのです。

それは、船上におけ るコンテンツのみならず、営業の面における販売網における戦略なとも連動させる必要があったのです。 この確信を元に「ソーシャル」の面から、船上の滞在環境を考える際に、下記のようなシナリオ を描いてみました。

船上の滞在環境は、クルーズ乗船客が主役で自分がすべての中心にいると認識させる滞在環境を演出します。その上で、 従業員(乗組員)との親密な環境を演出し、「ファミリー(後のクリスタ ル・ファミリー)」的雰囲気を創り出すのです。

「サービス」は、クルーズ客船運航会社の仕掛けである程度対応できるにしても、「ソーシャル」は、そこにいる乗船客同士間の交流です。

新しい仲間との交遊の楽しみや人情の発見や歓楽 欲を満たすような食後のロマンチックな環境が重要なのです。

これを円滑にするためには、主役であるクルーズ乗船客を支える多様な文化的歴史的な背景を持った多国籍クルーやアメリカ以外の第三国から訪れたクルーズ乗船客の心地よいハーモニーが必要なのです。日本的で同質的な「おもてなし」を越え、国民性の違いを通して、「感動」や「感心」そして「新しい発見」などがこの事業に活力を与えると明らかになったのです。

このようなクルーズ客層の中から、彼らのライフ・スタイルに合わせて、最も快適な環境を創り出すのです。その環境を創るということは、これらの人たち の乗船客のライフスタイルを理解し、彼らが日常どのような生活をしているのかを知り、どのようなものに興味を持っているかなどを知ることの理解に努めることです。

サービスを提供する側としても、例えば食事のテーブルホストとしての役割は、食事の質やサービスに加えて、そのダイニングテーブルで 2 時間余を、彼らが興味を持っている朝のワイドショーや テレビ番組やソープ・オペラなどの話題にも積極的に参加できるような、ある程度の「彼らの中の常識」を基にした常識と会話力が必要です。

サ ービスを提供する立場としては、船上での社交を通して、彼らが 快適と思う「滞在体験」と「相性の合う乗客同士のコミュニティー」の本質を常に見極める必要があります。

c) 「ソーシャル、つまり相性の合う乗客同士のコミュニティを形成するには、「贅沢な選択肢」の提供が掲げられます。

ラグジュア リークルーズでは、「長期滞在」が基本で、彼らにとって滞在中の食事をはじめ、人の出会いや多彩な娯楽など、感動と感性を覚醒する滞在環境を演出する必要があるのです。

決まり切ったお仕着せの企画ではなく、多くの選択肢の中なら、乗船客が気の向くままに選べるだけの潤沢なメニューを満たす商品企画力が必要となります。

既存のラグジュアリー・クルーズ客船社との差別化のために、新しい試みとして、競合他社のプロダクトのみならず陸上のリゾート・ホテルなどのサービスやそのコンセプトも積極的に導入し、これは多彩な食事の面でも考慮されねばならないです。

(2) クルーズ船客の求める”主観的”価値観と出会いを創る環境 ……船客は、「ストーリー」に価値を求めている

これから始めるラグジュアリー・クルーズ業のターゲットとする客層は、「モノの 所有」よりも、 クルーズ客船上における人との出会いや滞在中の体験などを、「心に刻む」ことに、より価値や感動を求める人たちである。船上での「人との出会い」の出会いを、より感動深いものと感じてもらうことが重要と捉えています。 その場を作るためには、食事の後の充実したロマンスやエンターテイメントや食後酒も必要です。

クルーズ旅行のリピーターは、極めて主観的な旅行経験や体験、そして新しい発見や感動”に加えて自らがどのような扱いを受けたかなどで、クルーズ旅行の価値を考える傾向があります。

例えば、あの従業員の態度が悪いとか、テーブルに着いてから食事の時間までが長いか短いか。隣の旅行者の食事の量は自分のものと比べどうか。ウエイターのサービスは自分に対して差別的でないかとか、それぞれの能力とは別の 所で評価されうる事もあるのです。

どれもかなり主観的旅行経験であるが、彼らはこのような主観で旅行自体の満足度を評価します。自分の旅の「物語」の充足度に価値を求めているのです。

クルーズ事業は、主としてアメリカ人クルーズ乗船客を対象とした彼らの「文化」を 取り込む事業なので、まず何としてもアメリカ人マーケットから受け容れられる仕掛けが必要であったのです。

これを理解していれば、船上での多国籍クルーとの相性が織り成す親密さが創れるのです。自分の身の回りでサービスをするクルーや、毎日食事の際にテープル・ホストとして 2 時間余も会話をこなす幹部乗組員の役割は極めて重要です。

100%のサービスでクルーズ乗船客に受け入れられて、120%で初めて高い評価を得る関係でもあるのです。

(3)クルーズ乗船客と従業員の織り成す「相性」

クルーズ旅行は、船上での「体験価値」が重要な要素となっており、当然クルーズ客船社として は、クルーズ船客が主役の「感動」のドラマをどのように演出するかを考えなければならない。そ の多くの分野では、主役であるクルーズ船客とその脇役である多国籍クルーとの相性で決まると言っても過言ではありません。クルーズ乗船客の期待度が高ければ高いほど、脇役のやりがいは大きいのです。

各種の調査やこの道のエキスパートから、この「ケミストリー」の濃さこそが、 ラグジュアリー・プロダクトの世界では最重要であると指摘を受けたのです。ここを「個性化」し、他のクルーズ客船社とは違うケミストリーを構築する必要性を理解していたのです。

他の既存ラグジュアリ ー・クルーズ客船会社のプロダクトとの差異化も図りつつ、クルーズ船客と乗組員間での 感情面でのつながりを強化します。ここの評価が定着すれば、クリスタル・クルーズ社の顧客層に新会社のプランドが 認知され、ロイヤリティ、つまりリピーター増大も可能です。

一方、クルーズ客船上において人間関係のおりなす相性がうまくいっているときは良いが、1 度でもあるいは些細なことでも「思い出の心」に傷がつくという、非常に厄介な負の部分もあることを理解する事も大事なのです。

その負の部分に無関心であると、せっかく誘致に成功した乗船客を逃してしまうのです。

この負の部分、彼らが何故離反するのかの追及と生産工程のようなゼロディフェクト効果でサービスの質の向上を心がけるシステムの構築が必要なのです。

ラグジュアリークルーズ旅行では、年に数回も乗船するような多くのクルーズ乗船客(リピーター)で支えられている旅行商品なのです。

このリビーターの多さは、クルーズ船客・旅行者の満足 度や感動度の高さと比例している。統計的にこの理由を掘り下げていくと、船上での生活体験と其 処で織り成す「クルーズ船客」 と乗組員との相性にたどり着くのです。

クルーにとっては、 クルーズ乗客船での勤務は、職住が一緒の逃げ場がない舞台なのです。

また年に2度 3度と同じクルーズ客船に乗ると前回と同じ顔ぶれのクルーが、”ウエル カム・ホーム”(おかえりなさい)と 言いながら出迎え、家族の一員のように親しみを持って旅行の手助けをしてくれるところもクルーズ客船による旅行の最大の特徴のひとつです。

彼らとこのリピーターとの多くの交流が、この クルーズ会社の「ファミリー」としての強い絆になる。換言すれば、クルーズ客船の乗組員 は、同じ船の家族 の一員であると同時に、旅行をより快適にするための添乗員の役割も果たしてい ると言えましょう。クルーズ客船上での彼らとの出会いが新しい「滞在価値」を覚醒するのです。

(4) クルーズ乗船客が求める舞台とそれを提供する多国籍クルー

旅行代理店等の販売網(デストリビューション・システム)との覆面調査などの分析を通して、主要船客のライフスタイルを前面に出し、クルーズ乗船客とクルーの交流や接触の機会を高め、 深める仕掛けが必要でした。

ホスピタリティ産業の”商品”を構成するファクターの中で、最も重要なものは、ヒューマンなケミストリーにより構成される想像力とそれを行動に移す実行力です。

そこにはクルーズ客船運航会社の種々のノウハウが凝縮されるわけで、仕掛けで模倣は出来ても、「心」まではそう簡単には真似されないものです。

クリスタルクルーズ社のブランド構築とそれを定着させるその「心」の仕掛け、ブランドの持つ価値を最大限に高める環境作りが 極めて重要であったのです。

この舞台づくりには、それを構成するサービスする側の人材の発掘とキャステング、多国籍人材の国民性や多様性を充分発揮させ、クルーズ乗船客との相性を醸し出し、クルーズ会社独特のクルーズ船客と従業員(乗組員)のケミストリーを作り出すことが最も必要であるとの 認識に至ったのです。

当時のオーナーである日本郵船本社と現場の新会社の幹部間では、「便宜置籍船」方式 の導入を決めていたのですが、当事者間ではこの旅行商品の将来の成功の可否を握る大きな柱でああったのです。

特に、この新規クルーズ客船事業は、企業ミッションで、今まで経験のないような「滞在型のリゾート」のコンセプトを基本としたクルーズ客 船運航会社を創り、優れた旅行商 品を提供すると謳っている。この実現のために、サービスコンセプトの基本に、有能な国際乗組員の採用と運用でクルーズ船客を満足させる船上での体験環境を構築する。サービスに関して は、クルーズ船客 にとって「バリュー・フォー・マネー」(納得感)が評価しやすい環境、すなわち 彼らのニーズに合わせたサービスの提供により満足度や感動を高める、その結果、リピーター率の 向上と彼らを通しての「ロコミ」客などの新規客の誘客層の拡大など、将来の万全の態勢に備える事を認識していたのです。

その「長期滞在」の場を提供するクルーズ客船事業を舞台裏で支えるのは、「多国籍 」乗組員が持つその多様性と感受性の豊かな人材力に賭けることにしたのである。感動は、予期せぬ出 来事などが生み出します。失敗が成功へのヒントになるのは、この予期せぬ出来事のお陰である。考え方も多様であれば、その対応も異なるのです。

ここに目を付けたのである。日本でよく話題になる「同質的な価値基準 (マニュアル) 」での格式的な対応は、多くは問題の「処理」に目が行きがちで、多様な人種や文 化的背景で育ってきたアメリカ人船客の相手により異論を生みやすい傾向があります。感動には現場での問題の「処理」よりも「解決」が重視されなければならないのです。

陸上のホテルの労働環境と異なり、クルーズ船客と同じ生活環境を共有する船上では、ホテル部 門の従業員(乗組員)の個性や国民性をクルーズ船客に「露出する」ことによって、この事業が成り立っているのです。彼らが船上における 滞在環境も含めて愉快に働く環境、従業員の満足度、つまりロイヤリティがあればリピーターの多くは、彼らの仲間になり、満足度も高まり、彼らも 「ファミリー」の一員になれるのです。

「ファミリー」になれば、阿吽の呼吸が機能し、その「ファミ リー 」を構成する船上のクルーは、クリスタルクルーズ社の船上における「旅行商品」セールスマンにもなるのです。

(5) サービスを提供する多国籍クルーによる多様性

アメリカの旅行経験の豊富なクルーズ乗船客に、今まで経験のないような充実した船上での滞在経験を提供するには、世界の人的マーケットから、最善の適材適所の人材を調達する事が不可欠でした。

適材適所の多国籍クルーの採用が可能であれば、最適なクルーとクルーズ乗船客との比率を構築でき、それがクリスタルクルーズ社の成功の鍵を握っているのでした。

この分野で、「便宜置籍船」としての有利さを十分 に発揮する必要があります。多様な人材のリクルートを容易にするような、船籍をバハマ(ナッソー)である事が重要でした。

良質なサービスの提供を、多国籍クルーの採用により、その国民性を背景とした個性に溢れたダイバーシティ(多様性)を最大限に発揮できるサービス環境を構築することが、この事業の仕掛けの中で、最も重要なものの一つでした。

主役であるクルーズ乗船客に充分に 心配りが出来るような船上でのホテル組織を構築する必要もありました。アメリカ人クルーズゲストを念 頭に、サービス部門で言うと、ダイニングに最も適した国民性は何処か・クルーズ客船の 台所であるギャレーのマネージメントは、

「どこの出身者に任せるか?」

「部屋周りのスチュワーデスなどは何故北欧系の女性が好まれるのか?」

などを精査してクルーの国民性などを中心とした混成チームを検討したのです。

クルーズ事業において、船上で働くサービスを提供する人は、彼らの生活や会話 力はもとより、 サービスをする側の「感性」や行動に対する「予見力」が重要になるのです。

エンターテイメントの世界 で言えば、映画の俳優のような、切り貼りが出来、一方通行の役では務まらない。彼らが職住を共 にするので、クルーズ船客の反応を冷静に読み取り、その場で柔軟に対応しながら、臨機応変さに裏づけされた、船上生活と言う舞台周りを創り出すパフォーミング・アーチストでなければならないということです。

船上の生活環境は、アーティストが、観衆を前にしながら、感謝の心とともに、最高のパ フォ ーマンスを見せる舞台なのである。彼らの個性と、そこに滞在するクルーズ船 客のケミストリーが 最も大切なのです。

“浮かぶ別荘”といわれるクルーズ客船での滞在生活が快適か否かは、脇役として のホテルサー ビス部門の乗組員の個性、相性の善し悪しで決まると言っても過言ではありません。

クルーズ会社としては、常に優秀な従業員(乗組員)を確保する事が、サービスの向上のためには必須の要件になります。

それと同時に、従業員の毎日を快適に維持する必要も感じていたのです。自分が、運航会社からリスペクトされたていると認識している従業員は、多くのクルーズ船客に、より多くの感動を与える事を知っていたのです。

船上サービスの「命」である人的要因は、対象顧客にとってもっとも望まれる(国籍的に)適材適 所主義とし、世界の人材マーケットから採用する。多国籍船員の背景にあるナショナリティ(国民性) の特性を最大限に生かすことです。

欧州のそれぞれの国民性の持つ個性や特性を残しながら、それをクリスタルクルーズのサービスミッションやサービス・マニュアルであるクリスタル・ベーシックで、 均質化するを目指す戦略を描いたのでした。

(6) 多国籍乗組員同士による相性

船上でのサービスの基本をなすスタッフの構成に関しては、適材適所を旨として 白紙に絵を描く 作業から始まった。数度にわたる「覆面調査」や旅行代理店、他のラグジュアリー・クルーズ客船 に乗るクルーズ乗船客等との接触でクリスタルクルーズ社にとってのベストの組み合わせた相性を考えたのです。

それは多国籍従業員(乗組員)間の相性のみならず、クルーズ乗船客との相性、すなわち「マーケッ トに聞く」という基本姿勢を貫く事が重要と考えたのです。

船上ホテルにおける、サービス・システムに関しては、アメリカ人船客が高く評 価する欧州スタ イル採用を決めていたが、具体的にはノルウェイ・システムとオーストリーア・システムの良いところを併用し(後のクリスタル・スタンダード)を構築したのです。

適材適所の人材を世界各地から集めるといっても、闇雲に手当たり次第とはならない。

彼らの国民性とか、その生活環境からの個性・経験などが、複雑に絡み合って、アメリカのクルーズ乗船客に、快適なケミストリーを発信する必要があります。そのため、船の乗組員の構成は、アメリカ人船客(マーケット)の意見を聞くこととした。世界でも最上級を狙う以上、それを実現できる人材を、ヘッドハントも含め確保することを基本方針としてこれから採用戦略を練る必要もでした。

つまり、アメリカ人が見る国民性やイメージ、たとえばイタリア人=人との交流、ドイツ人 = 几帳面 さ、ノルウェー = 清潔感を十分に配慮して決めることとした。

クルーズプロジェクトが、具体化する過程で、多くのクルーズ客船の従業員(乗組員)構成などに 関して、現状とそれに対するクルーズ船客側・旅行代理店などの集客組織側の意見を集めていたが、 それらのデータなどを元に、基本的なクルーミックス(従業員構成)の基本構成を描くこととなった。

a) 本船運航部門においては、マーケットを席巻している仮想競争船社としての ロイヤル・バイ キング社や NAC 社が念頭に有り、北欧系の船長を含め、日本郵船の優秀な乗組員も乗せ、幹部船員 については、ノルウェー船長他、ノルウェー・日本人の混乗(日諾混乗)とすることとした。

オーナー側の日本郵船東京本社としては、ノルウェー船長は「接待」要員としての船長で、運航の実務は日本郵船の船長が握るとの発想で始まったのです。

また船上におけるホテル部門については、ヨーロッパ系ホテル従業員の起用を次のように考えた。

・ ホテル、ダイニング従業員 ヨーロッパ系
・ スチュワーデスクルーは北欧系
・ ダイニングのギャレーはオーストリア人シェフ

他にもエンターテイメント部門トップ 上品な個性と「スタイル」を持っている英語国出身者が起用されたのです。

(7) クルーズ船客と乗組員の乗船比率

長期滞在の場を提供するクルーズ客船事業は、「滞在型のリゾート」のコンセプトが基本になっています。クルーズ乗船客層を絞り込んだライフスタイルを基準にした客相に合わせて、彼らにとって 最も快適な環境をづくりを考えると、今までの調査などで、適材適所の国民性以外に、サービスする乗組員の人数の試算も重要になってくるのです。

これはサービスに加え、コスト或いは彼らの為の居住空間にも影響を与えることになるのです。

主役であるクルーズ乗船客に充分に心配りが出来るような、船上でのホテル組織(乗組員) とクルーズ乗船客の比率も重要な指標になります。その船上における、クルーズ乗船客とクルーの比率を、1.8 対 1 と、ラグジュアリー・クルーズの中では最大級のレベルを目指すこととしたのです。これは 新造船の従業員部屋の数 にも影響を与えるのです。

(8) 「日常的」滞在環境

クルーズ旅行に於いては、常にクルーズ船客・旅行者が主役です。

クルーズ客船は、船長や 従業員(乗組員)だけのものではない。クルーズ客船は、寄港地(目的地) での観光以外に、船上での ライフスタイルの滞在「体験環境」(旅の過程 = プロセス)が重要です。

その実現のためには、船としても、その舞台裏の演出が大事です。その舞台は、主役であるクルーズ船客層の共通の文化的・ 社会的背景、すなわち「日常的」ライフスタイルが、常に反映されたものでなければならない。ク ルーズのような滞在型の旅には、「非日常的環境」は無理があり、長続きしないし、堅苦しく飽きが来易いのです。

気楽さと時間などに追われることがないことが重要で、クルーズ客船会社が絞り込んでいる客層の中で、船上での多数を占めるクルーズ船客の国籍や文化的共通性をベースにしたものになるのです。

旅行商品をつくる立場のクルーズ会社としては、彼らの対象とする客層のライフスタイルを充分理解した上で、構想を練る必要があります。

ラグジュアリー・クルーズ・マーケットに於けるクルーズ旅行商品の革新には、クルーズ客船会 社に、クルーズ客層を合わせるのではなく、客層や客相やその傾向に合わせて、クルーズ客船会社 が、ライ フスタイルの「時代の先取り」をする先見力が求められる。

アメリカ船客を客層とするクルーズ会社から見ると、アメリカ人旅行者にとって は、クルーズ客 船上での生活は、英語が通じ、食事も娯楽も、アメリカでの生活そのものであり、まさに”日常” の状況を、海上・海外にまで延長したに過ぎない(これは、日本では“非日常性”となる。クルーズ に対する見方も文化的価値観に基づく一例と言えます。

アメリカ人ゲストにとってクルーズの魅力は、アメリカでの日常生活舞台をそのまま外国に延長し、その上で、新しい国々や異国を訪ねること。

それに深夜まで、食事とかエンターティメントを楽しんでもその間も船は移動しており、翌朝は、新しい観光地に着いていることなどが、クルーズ旅行の醍醐味なのです。

その意味では、クルーズ会社は、このアメリカにおける日常性を前提に舞台回りを設営してきたのです。寄港地に着いて陸にあがれば外国で、船に戻れば、アメリカが在る舞台です。

アメリカ人旅行者を対象としたクルーズ客船が、アメリカ的雰囲気に溢れているのは、これらの要素を運航会社が理解した上で舞台づくりをしているからです。

クルーズ会社は、滞在型休暇の宿命として、この様に船上で大多数を占める船客の国民性や文化性が前面に出た旅行商品であるとの現実を無視し、クルーズ客船運航会社が自らの”主観的経営哲 学”だけで事業を始めてもなかなかうまく行かない場合が多いことを、過去の経験から学んでいるのです。

クルーズ乗船客は、1 人 1 人が異なった価値観に基づき旅行を楽しんでいるが、クルーズ客 船会社としては出来るだけ最大公約数的基準を設定し、潜在的船客需要が何処にあるのか十分事前に調査し寄港地、行き先、船上でのクルーの構成、サービス方法、食事、催し物を考えながら、船自体の建て構え・雰囲気を備えた舞台づくりを心掛けていたのです。

クルーズ旅行はこのような多数を占める国籍のクルーズ乗船客を主役としたエンターテイメントショービジネスであると言っても過言ではないと思われます。

(9) パッセンジャーミックスとクルーズ・マッチ

クルーズ乗客船は、クルーズ旅行者のライフスタイルの延長線上に存在します。しかし、クルーズ乗船客の客層によってクルーズ客船と言う舞台装置、つまり滞在環境は 全く異なっったものになるのです。

クリスタルクルーズ社はアメリカの将来対象とすべき、クルーズ乗船客のライフスタイルの分析に、多くの時間を費やしていたのです。陸上のゴルフクラブや社交クラブの場合、その入会金として、入会料を貰う事によって、会員などのセレクションが可能であろうが、クルーズ客船は、そのような方法は採用できません。

船上のライフスタイルが、ゴルフのカントリー クラブのような雰囲気であっても、それは閉ざされた会員だけのものではないのです。すべてがアメリカの消費者マーケッ トに対してオープンなのです。これとの関連で下記の面から検証が必要になるのです。

一つは、この様な対象とされたライフスタイルを持った、同じような価値観を持つクルーズ船客にとっては、クルーズ乗船客同士の居心地がよく、お互いの社交や 交流も活発になるのです。これがクルーズ客船社の滞在環境に良い意味の刺激を与えます。これが人と人との織りなすケミストリー、お互いの相性のベストマッチングが重なって、より快適な滞在環境が出来上がるのです。

プリンセス・クルーズ社のアイランド・プリンセス号船上での出来事をテレビドラマ化した「ラブ・ ボート」は、船上で起こる人と人の出会いのをロマンチックに描き、アメリカで長期間の人気番組でした。このような船上におけるクルーズ客層の心地よい交流には、 クルーズ客船の特徴を捉えることが必要になるのです。まさにヒューマンビジネスと位置づける事ができ主役は常に乗船客なのです。

一方、全く異なった価値観を持ったクルーズ船客が、異なったコンセプトをもとにでき上がったクルーズ乗客船に乗ると、不快な事も多く、滞在型の休暇を台無しにしてしまうモノです。

どのクルーズ客船に乗船するかは、その旅行の楽しみ方にも影響を与えます。なぜなら、一度船に乗ってしまえば、船の雰囲気が違うといって、簡単に下船するわけにはいかないし、予定の変更も不自由になりかねません。

それゆえ、乗船客とクルーズ客船のミスマッチを避けなければならないのです。

ラグジュアリー・クルーズ客船会社は、販売ネットワークの核を成す旅行代理店などに、

「自らの絞り込んだ客層は、そのようなイメージなのか?」

「滞在中の生活環境は、他社に比べて何が違うのか?」

など、営業企画面や運航面における特徴を前面に出し、試乗など乗船活動を活発化し、その違いを具体的に知って貰う必要があるのです。

クルーズ旅行経験者・旅行代理店等を新会社の味方につけ、彼らの顧客と新会社のクルーズ旅行商品との相性を理解し、適切なクルーズの相性探しというシステムを構築する必要があるのです。

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NOBUの味が洋上で味わえる

松久信幸氏が特別ゲストとして「クリスタル・セレニティ」乗船された時の一コマとメニュー

クリスタルクルーズ船上で提供された「NOBU」の料理の数々

日本食に南米料理のエッセンスを取り入れて、創造性あふれるノブ・オリジナルを確立させたシェフ、ノブこと松久信幸氏。その世界的に有名なシェフが、2003年クリスタル・セレニティのレストラン&すしバーをプロテュースしました。

その時のエピソードをご紹介します。

―クリスタル・クルーズには10年前にシドニーからニュージーランドまでゲストシェフとして乗船したのが最初だという伺いました。

フランス人の友人、ミッシェル・フランシエがクリスタル・ハーモニーのコンサルタントをしていたことから話がきたそうです。

「2日間乗船しましたが、船はひとりで乗るものじゃないですね。奥さんか女性と乗りたいと思った」

と当時を振り返るノブシェフだが、その後、クリスタル・クルーズの高橋光彦会長と知り合うことで、より深い付き合いをしていくことになっていくのです。

松久氏:それまでもゲストシェフとして何度か乗船したり、ニューヨークやロサンゼルスに停泊中のクリスタル・ハーモニーでランチに呼んでいただいたり、と時々船に行く機会はありました。

今回高橋さんにセレニティでぜひ僕の料理でやりたいといわれ、そこまで言っていただけるなら、と引き受けました。

高橋さんとは長いつきあいですが、彼のクリスタルへの熱意に感動して、何か僕が役に立てることができないかと思ったんです。

セレニティでやることが決まってから、シェフは丹波君、中口君とNOBUアスペンで働いていて8月から乗船する小林君の、3人のマツヒサ卒業生を送り込むことにしました。

NOBU東京の共同経営者ロバート・デ・ニーロ氏が好物のNOBU看板料理の一つ「銀鱈の西京焼き」もゲストに好評

―新鮮なネタが命のすし屋を洋上で開く。そこには陸上とはまったく違う食材の調達方法があり、陸上のようにはいかないことがたくさんあるはずです。客船ならではの問題にどのように取り組んでいくのでしょうか。

松久氏: できるだけ各港で新鮮な食材を積み込んでそれを出せるようにしたいが、来ていただいたお客さんすべてに出せるほど十分かどうかはわからない。

最初はベーシックなメニューコンセプトでやっていこうと思います。

7月7日からの処女航海に僕も乗船し、丹波君や中口君と一緒に船の上で考えながらチャレンジできるようにしていきたいですね。

ただ世界中をまわるクルーズですから、各寄港地で出会ったものも生かしていきたいと思っています。

でもその国に行くからそこの料理を作るのではなくて、それぞれの土地で出会う食材を使った僕なりの新しいメニューができあがると思うので、どんどんクリエイトしていきたいですね。

―「モットーは、ビジネスの基本である『今日は一日何人入って、いくら売れてもうかった』ということよりも来ていただいたお客さんにどれだけ喜んでもらえるか、ということ」と言い切り、どこまでもゲストの満足にこだわるノブシェフ。

陸上のレストランと違って料金はなく、2週間のクルーズ中、同じゲストが何度もやってくるという特殊な状況の中で、その旺盛なサービス精神は存分に発揮されそうです。

松久氏:そういった食材の調達以外でできることならば、メニューにあるものだけを作るのではな、お客さんとコミュニケーションを取りながら料理を作っていければいいですね。

日本人のお客さんでしたら「お茶漬けとかおそば、またあとで部屋でおにぎり食べたいとか必ずあると思うんですよ。そういうリクエストにも応えていきたいです。

お客さんの中には自前で何か持ってきて「これで作ってくれるか」と言ってきたりしたものにも、もちろん作ってあげたいなと思います。

田楽や冷奴など日本人ゲストにも好評のNobu Styleの和食 

すしバーというのは普通のレストランと違って、シェフが直接お客さんとコミュニケーションできる窓口ですから、いろいろとお客さんの意見を聞くことができる。

お客さんにとっても今までのクルーズと違った雰囲気を味わえると思います。

どこまでお客さんが心を開いてその要求を伝えてくれるかが、どこまでそのお客さんに入り込むことができたかという答えになります。

できる限りの食材の中で、どこまでそういった要望を満たしてあげられるかというのがポイントで、「ありません、できません」とは言いたくないですね。

―世界中に60店舗近くあるNOBUをこまめに回り、その間にテレビに出演したり、映画の話もあったりするノブ・マツヒサは忙しい。

そんなめまぐるしい生活を送るセレブリティシェフが持つクルーズのイメージとは「夢」。何もすることのない時間はとてもぜいたくなのだといいます。

松久氏:船内にいる時間は、次は何をしなきゃいけないというスケジュールがないし、急ぐ旅ではない船の中のあの空間の贅沢さは乗ってみないとわからない気がします。

仕事ではなく、将来的には2~3カ月でも乗りたいですね。今は飽きてしまうかもしれないけど。ただ、今こういった旅ができる人がいるというのはとてもうらやましい。

船内では静かに過ごしていますよ。普段がインドアなので、好きな時に日にあたって、たまにゴルフをして……。

仕事をしているとそうもいかないのですが、携帯電話もない状態でゆったりとした時間を過ごすというのが今の僕が必要としていることだと思います。

またクルーズの楽しみといえば、着いた港で市場に寄ること。

いろいろな場所に行くことはあっても時間がなくて市場に行けなかったりするのですが、クルーズでは下船して何をするのも自由ですからね。

ただ1人で乗った時には退屈してしまい電話代だけで4000ドルくらいしてしまいました。

といっても船上で生活していく中で、毎日デッキやジムで同じ会う人がいるんですね。いろんなところでいろんな人に知り合うことができた、それがクルーズのまた一つの魅力でしょうね。

―船ならではの特徴として「船では雨だとか電車の事故だとかでキャンセルされることがないから、何人来るかというのが陸上よりわかりやすいですね」と笑うノブシェフだが、そのほか世界を股にかける仕事をするノブ・マツヒサならではの「移動型洋上レストラン」の利用の仕方も考えているようですが。

ノブ:セレニティにはほかのレストランと同じように定期的に見に行きたいと思いますが、ロサンゼルスからロンドンのNOBUまで行く時に、スケジュールが合えば途中でセレニティに乗っていったりすることができたりもするでしょう。

そういった可能性はこれからたくさんあると思うので、考えると楽しいですね。

NOBUはマイアミ、ニューヨーク、イギリス、イタリア、アジアなどにありますので、例えばそういった港にクルーズでやって来たときにNOBUに行ってみようということになったら、たまたまレストランに僕がいたりして、ということもあるかもしれません。

―船上で新鮮な食材を入手して最高の料理を作るのはとても難しいことではないか、という質問に、「何か新しいことを始めるときには問題が必ずあるもの」

今から心配しても仕方ないし、いろいろなことが起きる中で学ぶことも多い。むしろたくさん出てきたほうがいい。

チャレンジを楽しむ。何事にもポジティブに取り組むその姿勢が、世界中を魅了するNOBUレストランのパワーなのだろう。

「年に3~4回は乗って、そのたびにクオリティーを高めていきたい」と語るノブシェフ。

【プロフィール】

埼玉県生まれ。東京・新宿の「松栄鮨」に住み込みで修業した後、ペルーやロサンゼルスのすし屋などで働く。87年にビバリーヒルズに第1店舗「マツヒサ」をオープン。93年にはニューヨークタイムズ紙による全米ベスト10レストランにランクインするなど、セレブリティにも大人気のレストランとなり、現在世界に57店舗のレストランとホテルを経営する。伝統的な日本料理をベースに、南米料理のテイストを混ぜ、トリュフなど高級食材と組み合わせた斬新で新しい食のスタイルを生み出した。

また友人で俳優のロバート・デ・ニーロに誘われて映画「カジノ」に出演したり、NOBU常連のスティーブン・スピルバーグ監督とマイク・マイヤーズが一緒にやってきたのがきっかけで映画「オースティン・パワーズ~ゴールドメンバー」に出演するなど、幅広い交友関係から、活動の幅を広げている。

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和食のカリスマ「NOBU」を船上に

クリスタル・セレニティ和食レストラン「Silk Road」にて

クリスタル・セレニティの建造計画が、具体的に進展していた2001 年 2 月クリスタル・セレニティの船上のソフトに付いても、新しい試みを演出する事となったのです。この頃はクリスタル・クルーズの客層も大きく変化しました。

より活動的で、新しいものに挑戦をしたがる客層が増えてきたのです。

特にスペシャリティ・レストランは、 イタリアン・レストラン・プレーゴ(Prego)は、流行の最 先端のハリウッドのセレブにも人気の「ヴァレンチーノ・レストラン」のオーナー・シェフ、セルバッジオの特別メニューを中心として検討を始めたのです。

一方、2002 年ごろはこの事業を開始した 1990 年ごろと比べると、アメリカの社会でも、日本食に対する見方が変わってきたのです。

そのアメリカ人の 食習慣に大きな影響を与えた日本食のシェフがいた。

松久信幸さん、通称「ノブ」さんです。

ノブは、 日本料理を主としたレストランを、ロサンゼルス、ビバリー・ヒルズで展開し、高 い評価を得ていた「松久」のオーナーシェフです。

クリスタル・ハーモニーの就航間もない、 1992 年 2 月のオーストラリアやニュージーランドのクル ーズの際ノブを、船上のゲストシェフとして招待。その目的は評判の芳しくない「京都」レ ストランのメニューの見直しと、彼が提供する料理がアメリカ人に受け入れられる理由を知りたかったのです。

このように、多くの機会を通して、クリスタル・ハーモニー 船上での、日 本食レストラン「京都」での苦労、その後のクリスタル・シンフォニー 船上における「ジェード・ ガーデン」の運営などに関して、よく松久氏に相談をしていたのです。

ビバリー・ヒルズに店を構える「松久」は、その料理の独創性と、未経験の和 メニューを試食するアメリカ人へのスタッフの対応力などから、店内はアメリカ人客であふれていたのです。そして彼が関わる新しいレストラン・チェーン「NOBU」の料理は、欧米では圧倒的な評価を受けいるカリスマシェフでした。

なぜ、彼の店はアメリカ人であふれている理由は、料理の内容や素材の質、プレゼンテーション、優秀なシェフと初めての客にも食材を説明できるウェイターなどや、尋ねてくるお客様の相性と彼らが織し出す独特の臨場感にあったのです。

また「松久」には、ベビー・ブーマー 世代の食に対する感覚を先取りする進取性や先見力があったのです。特に寿司の巻物のみならず、アメリカ人のお客様が生の寿司を、 未経験お客様にも食べやすい料理にする独創性があったのです。

日本食はその食材の手配に困難がともない、高級素材をもとにする「松久」や 「NOBU」並みの食材を維持するとなると、クルーズ客船上のメインダイニングルームやイタリアンレストランなどで供する食材コストの数倍もかかるのです。

クルーズ客船社にとって平均1日1 人10 ドル〜15ドルの予算が目安の料理コストを大幅に上回っており、それも食べ放題 がクルーズでの食生活の基本です。

それに加え、席数 80 人が時間代わりで最低3シフトものクルーズゲストが訪れるとなると、コストはイタリアンレストランの数日分に相当するのです。

このように世界各地を周遊するクルーズ客船で、日本食を提供しながら採算的に維持することは非常に難しい挑戦だったのです。

第三船の建造の機会に、「NOBU」の協力を打診してみた。クリスタルクルーズの幹部は、船上での手配となる食材コストに制約があり、通常の日本食に掛けるような予算は無いことをノブに話した上で、このように切り出したのです。

「Matsuhisaスタイルの料理とサービスをクリスタルクルーズ客船上で導入し、世界に紹介したい。わが社の新しい船に協力していただけませんか」と打診したとこる松久氏は即座に無償で協力をすると快諾してくれたのです。

この協力が実現すれば、世界にも広がりつつある「松久」や「NOBU」のブランド力を得て、この食材コストを充分にカバーできるような仕掛けができるのです。

クリスタル・クルーズとして、”松久スタイル”の日本食を提供するに当たり食材費のコストア ップについては、松久信幸としてのシェフのカリスマ価値と「松久」や 「NOBU」のブランド価値を宣伝費と割り切ってしまうという思考でした。

通常「NOBU」で食事をすれば通常100ドル以上もするが、クリスタル・ セレニティ船上では無料でしかも食べ放題と言う寄せ効果と、そのコストを天秤に掛けた発想でもあったのです。

こうして、第3船クリスタル・ セレニティでNOBU監修の「シルク・ロード」が誕生したのです。その後、クリスタ ル・ シンフォニーも、スペシャリティレストラン「ジェード・ガーデン」を「シルク・ロード」へ変更しました。

この結果、クリスタル・セレニティ船上での「シルク・ロード」は、誘客の仕掛けでは「マーケットでの効果」を発揮した。オーナー側には批判的な人たちもいるので、余り彼の名前を出さぬ方が良いのでないかとの意見もありました。

「松久」での客層を考えると、クリスタル・クルーズの発行する「クルーズ・アトラス」という年間航海スケジュールを網羅したパンフレットのみならず、多くの社外向け出版物に、ノブ自身を積極的に露出し紹介すべきと、マーケッティングの窓口に提案していたのです。

クリスタル・クルーズの宣伝を通して、欧米に広がる「NOBU」への援護射撃であると同時に、世界各地の「NOBU」で試食する食通な客層に、クリスタル・ クルーズを売り込む事が必要と考えたのです。

NOBUの提供する日本食を世界を漫遊する クリスタル・クルーズの船やそのゲストを通して、世界に広く知らしめ日本食の世界で、「ウイン・ウイン」の関係を構築を望んでいたのです。

日本食は、新しいエスニックへの挑戦であっ たが、クリスタル・クルーズに乗船する日本食 に不慣れな客層、特にクリスタル・ クルーズの主要顧客であるユダヤ系クルーズゲストからも彼の独特な料理手法は高い評価を得たのです。

彼の持つカリスマ性は、ハリウッド映画界や音楽界などへの露出度も高いのです。

クリスタル・クルーズの日本食導入のための食材コスト上昇を相殺 するに充分と判断していたのです。「松久」や「NOBU」としてのブランド価値を最大 限に利用できることも意味があったのです。

就航後は、クルーズゲストにとっては「松久」や「NOBU」 並みの高級素材の食事を、それも陸上の「NOBU」等で食事をすれば、1 人100ドル以上に相当する食べ放題かつ無料であり好評を得たのです。

かなり過剰サービス的と思われたのですが、クリスタル・セレニティ就航後、以下の点でクリスタル・クルーズにとってはかりしれないポジティブ効果があったのです。

・「NOBU」のトレードマーク価値シェフとしての松久氏の個人の魅力や「松久」「NOBU」社員の彼に対する尊敬の念と忠誠度。

・松久氏自身の社員に対する配慮、船上で働くことの苦労や厳しさ。

・他社との差異化。

・ 運営面このプロジェクトを進める上で、ノブの推薦するシェフの中口氏が、このこのプロジェクトの中枢で、「NOBU」スタイルと定着させる事に非常に大きな貢献をしてくれたのです。

また、アメリカ人が好きなものを食べてもらうに当たり、ウェイターが食材をよく説明する・創意工夫や世界的なロジステックス網や人材調達、ウェイターの説明力アップも各段に改善されたのです。

NOBUの起用の話を打診した初期の段階から、このコンセプトの採用には、本社側から異論が多々出ていた。

彼らは、東京に展開している「NOBU TOKYO」を数度尋ね試食し、その料理は、日本郵船が求めているようなものではないという厳しい要求が来ていたのです。

日本郵船の上層部の描く日本料理は「稲菊」とか「吉兆」のような日本を代表する純和風料理であり、それを船上でも同等のものが出せないのか?

「NOBU」の料理は日本食ではなく「創作料理」 じゃないか?

日本人乗船客は、「NOBU」の料理よりもっと、高級感と知名度の有るメニューを期待している等、日本の中に有る議論やパーセプションで、何とか”純和風のレストラン”か、割烹料理的なものができぬのかと言う。

本社が、まがい物の日本食を出しているのでは「サマ」にならないと言う意見。日本郵船がメニューを創り、それを「NOBU」で創ってもらってはどうか等といった暴論もあったほどです。

クリスタル・ハーモニーの和食レストラン「京都」導入 時と同じ議論が繰り返されたのでした。日本郵船本社の幹部は、クリスタル・ハーモニー建造の時から「純和風」に強いこだわりがあったのは事実でした。

日本郵船が配船するクルーズ客船でサー ビスをする以上、戦前の貨客船時代からの日本食を広めたような使命を持って、正統な日本食を提供し、その日本食の良さを世界に広めるべきだと言う肩に力の入った意見が大勢を占めていたようです。

当初は同じ主張をしていた幹部陣が「吉兆」などに 接触し純和風料理を模索したが、そのロジステックスも含めた運営面での難しさを知ったのです。

日本食にこだわる気持ちは理解できるのですが、 クリスタルクルーズのマーケットマーケットであるアメリカ人ゲストの嗜好を優先に考えるべきであるとして、議論はしばらくの間平行線を辿っていたのです。

創業の頃議論したアメリカ人クルーズゲストのマーケットに聞くべきだと現場再度では主張していたのです。アメリカで成功している「松久」「NOBU」を見る目はクリスタル・クルーズの主要客層であるアメリカ人と、東京に居る日本人とに、大きなギャップがあったのです。
投資側の日本郵船本社の幹部がロサンゼルスに来た際、松久氏が経営するレストランに案内してそのコンセプトを体験させたのです。その結果アメリカ側のニーズを優先すべしと、反対の意見も多かった上司や社内説得を展開となったのです。

2年余の時間を経て、アメリカ人にとってブランド 価値がある松久信幸氏のコンセプトが採用に至ったのです。

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船上日本食レストランへの挑戦

「クリスタル・セレニティ」の建􏰀計画の過程で、この業界において「ワオ」と唸らせる仕 掛けが必要がありました。

その仕掛けを見つけ出すために、クリスタル・クルーズの最も弱点を検討したのです。

その結果、クリスタル・クルーズの特徴は何か。その今までの歴史や或いは経営の背後に居る日本郵船本社とも議論した経緯があります。

創業の頃、このアメリカのホスピタリティ業界で、日本の企業としてのプレゼンスは、なかなか、 評価されなかったが、創業 10 余年を過ぎ、今や、数々の高い評価を得て、このラグジュアリー・ク ルーズでは最先端を行くまでになったのです。

常に、トレン ド・セッターとして、世界の海を駆け巡らなければならない使命を感じていたのです。そのような中で、アメリカのクルーズ業界やクルーズ船ゲストに、日本郵船が構想している、日本食に挑戦しようとの判断に至ったのです。

それが「クリスタル・セレニティ」の船上の一角 を占める「シルク・ロード」 +「スシバー」でなのです。

第一船、クリスタル・ハーモニーで苦戦を強いられた日本食レストランについては、「京都」の 運営面で、問題百出したこともあり、第二船クリスタル・シンフォニーでは、オリエンタル・レス トランとしてジェイド・ガーデン(Jade Garden)を開設しました。

これは、ロサンゼルス・サンタモニカ に、「シェノワ(Chenois)」を経営していたアメリカのセレブレティ・シェフ、ウルフギャング・パックの指導によるものであった。アジアンフージョンと言えるものであったのです。

クリスタル・クルーズ はこの様な食の文化にも挑戦をしてきたのです。

しかし、創業以来、日本郵船として何とか船上で上等な和食の提供が出来ぬものかというのが、まだ解決されていない大きな課題がありました。

特に、日本郵船としてのこだわりは和食。

「クリスタル・ハーモニー」で、当初のサイズを半分にして始めた「京都」は、極めて不評であった。これには主に4つの問題がありました。

(1) クリスタル・クルーズの主要客層であったユダヤ系アメリカ人や年長者にとって、日本食は、極めてエスニック食の強い料理という印象。

(2) 料理の段取りの複雑さ、スペース、シェフの個性

(3) 人材や食材の調達の難しさ

4) ク ルーズ船客へのコミュニケーションの難しさ

などなどもあり、和食色を抑えて、アジア風フージョ ン料理に提供などを試みてきたが、どれも不満足の様子でした。

アメリカ人クルーズゲストにとっては、 クリスタル・シンフォニーの中華料理「ジェード・ガーデン」 の方がクリスタル・ハーモニーの「京都」よりも相対的に高い評価は得られたのです。

しかし乗り出し時期から試行錯誤を重ねてきて、問題点も判ってきたのです。

新造船の建造のプランが具体化する過程で、アメリカ人ゲストにも受け入れられる和食の提供が出来るかも知れないと考えていた。

当時のアメリカのレストラン関連のマーケティングの専門書を読んでいて、アメリカ的な キッチンという舞台裏で料理をつくり、その作られた料理をサーバーがテーブルに持ってくるサー ビスをクリスタル・クルーズの基本姿勢である舞台裏の「ヒト」を前面に露出するシステムが出来ぬかと思っていたのです。

シェフの個性や魅力や、料理をつくるプロセスや技術に責任を持っ ているパフォーマーとしての魅力を前面に出して、観客であるゲストの前で、 披露できないのかと試行錯誤していたのです。

ロサンゼルスのハリウッドの近くには、何の特徴もない小さなホットドッグは (Pink’s Hot Dog) が、行列のできる店になって一日中繁盛していた。

この大盛況が、 数十年も続いているというのです。

この小さなホットドッグ屋には、ホットドッグをつくっている人とそれを食 べる人たちの交流(ケミストリー) にあると発見するのに時間はかからなかった。

日本の寿司屋スタイルは、板前さん(料理をつくる人)と顧客の持つヒトの取り持つケミストリー の露出が特徴になっている。

これこそクリスタルクルーズが求めていた究極のヒトを中心とし た食事の環境であると考えたのです。

日本的な寿司屋ほど究極のオープンキッチンはないと思ったのです。

この個人好みの発想をアメリカのレストラン雑誌の幹部と、今後の世界のレストラントレンドを話した時にいろいろ打診してみたのです。

アメリカ人はバーベ キューなどや鉄板焼きや等以外、魚などの食材に接する機会が少ないので、自分好みの料理をつくる板前さんと相談して試食できるレストランスタイルは、新しいトレンドになる可能性を秘めていると思われたのです。

最上級の寿司カウンターをつくって、 そこで、板前さんが顧客と会話をしながらサービスを提供する仕掛けを考える過程で、大きな確信にまで変えたのです。

ヒトの魅力を前面に出した、「オープン・キッチン」の発想でした。

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企業の永続的な成功をもたらす7つの方法

前述

クリスタル・クルーズはアメリカ合衆国ロサンゼルスに本社を置く日本郵船により1988年に設立されたラグジュアリークルーズ客船運行会社です。中型の高級クルーズ船を2隻運行していたのですが、2015年にゲンティングループのゲンティン香港に売却されたのです。

その後、2020年に新型コロナウイルス感染症の世界的流行により経営が悪化。2022年1月19日オーナーであるゲンティン香港は会社清算を申請したことを受けて運航を停止。その後2022年6月A&K Travel Groupがクリスタルクルーズの「クリスタル・セレニティ」と「クリスタル・シンフォニー」の2隻を取得し現在に至ります。

このように売却を繰り返すものの、クリスタルクルーズはアメリカをはじめとする世界中の富裕層旅行者に支持されていることが見受けられます。その永続的な成功には及ばなかったものの、売却価値のある企業の秘訣を以下の通りにまとめてみました。

1 企業ミッションの確立と販売網の囲い込み

新造船建造による新規事業への進出が、結果として時間に余裕が出来、
(1) アメリカ側での徹底的なマーケット・リサーチと僚社の分析
(2) 最適任の人材を集めることが出来た。

同時に旅行代理店などアメリカの販売網をこのプロジェクトの仲間として抱き込むことに成功し、 この親密な関係でマーケットに対して新会社の将来への展望も含めた中長期的なビ ジョンの提示をしてきたのです。

親会社のトップマネージメントのお墨付き事業でもあり、会社としての意思が明確で、それが、 現場であるアメリカ側(運航会社クリスタル・クルーズ)の対応を容易にした。

親会社のこの事業に 関わった担当者たちが人事異動で交替しても、アメリカにおけるこの事業を推進している幹部の方向付けやバックボーンは揺るがない体制が短期間で構築できたことで、クリスタル・クルーズと それを支える販売網との間で、明快な企業のミッションを共有し、新興企業として目指すビジョン を業界や消費者マーケットに伝えることができたのです。

当地の日本人幹部や米人組織に対する明確な権限委譲によるところが大きいと思われたのです。

この事業の企画設計を担っていた日本側幹部陣はこの状況を理解する寛容さを持ち合わせていた事はとても意義のあることでした。

この事業の始める際に成功の基は人材次第と理解しており、試行錯誤しながらミッションを全社内で共有できていたのです。

この事業に携わるコンサルタン トやラグジュアリークルーズの質を決定付ける、アメリカ側の幹部社員や国際乗組員の採用を容易にするとともに、彼らの長所や特性を生かした仕掛け・配置が可能となったのです。

その結果、全 くゼロから始めるクルーズ会社の利点を生かし、マーケットに耳を傾けることを優先する姿勢を堅持し人材を中心に置いた基本コンセプトの構築が遂行できたのです。

マーケットが主張し、現地クリスタル・クルーズは、その要請に柔軟に対応 日本郵船は投資家と しての自己主張を抑え、現地事情に最大限配慮するというシステムがしっかりしていたのです。

クリスタルクルーズ事業の初期段階からマーケットを囲い込んで参画。マーケットの意見を聞くと言う発想は新興のクルーズ客船会社にとって、彼らの全面的な支持という掛替えの無いものを得たのです。

消費者マーケットを対象とするこの事業にとって最も大切な販売網を、早くから味方に付けることが出来たのが要因です。言い換えると、マーケット価値を常に頭に描きながら方針を決める手法に徹したのです。 これは 今までの B TO B の基本であるサービスプロバイダーが中心にあるサプライヤーマー ケットの思考からすると大きな違いでもあったのです。常にマーケットに聞く姿勢があったのです。

この事業のコンセプトや企業ミッションの浸透にも心を砕いた。投資主で有る日 本郵船の意図も あれば、オペレーターとしての意図もあります。

クルーズ事業知識に乏しい日本郵船は、あくまでも黒子に徹し最終的に「結果が評価を呼ぶことでよし」としたのです。気がつけば日本郵船路線は、本船就航のあと 1 年後には、大きな成功を収める事となったのです。

アメリカ式と日本式の経営方針の棲み分けが、非常にうまくいった例と言えるでしょう。

その棲み分けの円滑な運営は、本社とロサンゼルス側の邦人幹部間での意思の確認を徹底した成果でした。

定期的にクリスタル・ハーモニーを訪れ、現場である船上スタッフに、コンセプトと将来の展望などの浸透も怠らなかったのです。

これらの機会を通しての現場の声の吸収も、大事な仕事でした。とりわけ縁の下の力持ちであるフィリピン人クルーとの接触やプロモーションの機会に時間を費やしました。

乗組員には人種的なランクや差別を作らせない欧米人贔屓の排除ことを考慮し、フィリピン人クルーの意識改革を促すことも必要でした。

乗組員としては、彼らフィリピン人が一番多い現実がありました。

2.雇用人材と社外人脈

「クリスタルクルーズ」と言うブランドの構築の柱に、「ヒト」=「人間力」を置き、どのよ うな舞台を提供すれば、彼らが人間力を存分に発揮して、それを船上での滞在環境の構築に結びつけることが出来るかを模索してきたのです。

異文化を背景した国際従業員の多様性を最大限に生かしながら、ブランドへの求心力を強化。

勿論、この背景には、幹部船員や船上従業員の経験や改善力を最大限に活用する体制が構築できたことが大きいものです。

まだ船も出来ていない新しいクルーズ客船運航会社にとって、新造船建造から就航までの 2 年間、クルーズ商品の基本である船上滞在環境構築には、多くの人材を既存クルーズ客船会社から引き抜くしかないのです。

人材情報の入手の為には、競合相手の中にも情報源の仲間を作る姿勢を常に心掛けていた。全米に広がる旅行代理店のプライベートな会に積極的に出席し、その都度競争他社の幹部との接点を深めていったのです。

クルーズ会社や全米の旅行代理店のスタッフが集まるクルーズソサエティなどは、 人材の輪を創るのに好都合でした。これでクルーズ業界の幹部も集まり高度な話題が溢れるのです。

日本郵船の本業である物流ビジネスと違い、人間性や人柄、そして個性的な魅力を売る事業であることに早くから気がついたのは、クリスタル・クルーズの事業を展開するのに好都合だったのです。

クリスタル・クルーズを動かす人材、人脈をクルーズ産業を支える業界、とりわけ旅行代理店ネットワークとマスコミが高く評価してくれたのです。

クルーズ客船会社としての運営上のコンセプトを、クルーズ客船の運営プロ集団 で構成するクリスタルクルーズ社に委ね、その人材を中心とした社内組織と徹底的なタッチ・ポイントである現場主義に任せる仕掛けがこの人材と人脈による戦略に大きく寄与した。

経験豊かな 欧米業界経験者の採用とその後の彼らの自発的主導力につながる。

少数精鋭主義を掲げたクリスタルクルーズのロサンゼルス本社での「方針の即決」は、顧客の変化への対応もきわめてスムーズにした。その徹底した現場主義が プロダクトに対する権限委譲を より効果的なものにした。さらに、船という現場でのサービス・マニュアルも「タッチ・ポイント・ マネージメント」の導入で、明確でかつ即決即断主義が徹底できた。

 3 .マーケティング技術の駆使とフレンドリーなセールス体制の構築

種々のマーケット・リサーチを駆使して絞り込んだクルーズ客層に(クルーズ客層や客相とプロダクトにマッチしたコンセプトが評価されたのです。 特に売れ筋に関する情報収集 に効果的なマーケティング手法を使って調査し、現場での客の動向を把握する仕掛けができた。

この事業に対する経験が不十分な日本郵船としても、重要な判断や決定の前に、まずマーケットの判断などを探る方法を 優先した。この業界のライバルに対しても、相手の分析を徹底的に行ない、 船上で の「滞在価値」の充実は、他社が模倣できない分野(ソーシャルを中心とした人的 交流の密度とエンターティンメイントなどで、新たな独自性を前面に出し、

このプロジェクト初期から、PR 会社などを巻き込んで、クリスタル・クルーズのクルーズ商品を企画する体制を確立し、既存社の長・短所を徹底的に分析する仕掛けが日常業務でも機能していたのです。

無名のクルーズ客船社の誕生に当たってはクリ スタル・クルーズの戦略は際立った効果があったと思われているのです。

CNN の船上での放映権、あるいは、イタリアン・レストランの運営に際して、アカデミー賞などで 必ず話題になる「スパーゴ」(Spago)のウルフギャング・パック氏などからの積極的なアドバイスなど、クルーズ 業界におけるイメージ作りでも WAO「ワオ」効果をもたらしたのです。

セールスの分野では、販売網である旅行代理店との関係においても、実績のない新会社として、 「新会社を旅行代理店と共に創る」姿勢を徹底し、会社の創業前から彼らの積極的な商品開発への参加を促したのです。

「マーケッティング」と「セールス」と 言う営業の両輪に基本に、販売網の積極的な参加と、彼らの「口コミ」戦略を徹底したのです。

この口コミ戦略には、旅行代理店の窓口担当者など の試乗会などへの積極的な勧誘が効果を発揮。

乗船客の試乗体験の口コミ効果も大きな波となって、全米の富裕層の客に伝わり、これが将来のリピーター戦略の核となって行くのです。

4. リピーターを逃さない販売システムの構築

この事業の拡大には、販売網の確固たる信頼と支持で、我々の味方にすることリピーターを対象とした「クリスタル・ソサエティ」と言うリテンション・システムの導入とゲストをリピーターの層を確保する仕掛けが必要になる事を、この事業準備段階から頭に刻み込まれていたのです。

販売網の核を成す旅行代理店では、クリスタル・クルー ズ新造船建造の時から積極的に参加してもらう仕掛けが上手く機能したのです。

船が出来上がって、彼らはクリスタル・ハーモニーは、自分が推薦した従業員である等 と、親しみを込めて彼らのゲストの勧誘の際の話題にしているのです。

旅行代理店網はクルーズ船客に対する有効な口コミ・コミュニケーター」の機能を持っている。主要マーケットでの評価の高いセ ールスマンのリクルートが上手くいった ことで、セールス・スタッフの効果的な配置が実現しました。 主要客層としてユダヤ人マーケッ トなどの囲い込みも成功したのです。

潜在的リピーターは、半年から1 年以上前に予約をしてから乗船するまでの長い時間待ち続けるのです。

実はこの期間が、旅行代理店やクルーズ会社にとっては重要な種まき期でもあったのです。

クリスタル・クルーズを熟知した旅行代理店は、クリスタル・クルー ズと他社との違いなどを、積極的に宣伝し、新しい船客の期待心の高揚を図り、結果として、下船したゲストから高い納得度を得たのです。

更にクリスタル・クルーズを支持する旅行代理店の集客を容易にするために、船上には商品知識が豊かなクルーズ・コンサルタント(船上でのセールス担当= 陸上のセールス部門の配下)を配置し、船上予約を受け付けたことが、お得意様を増やしリピーター率の高さを保つ秘訣でした。

自らが送り込んだゲストが、船上での次のクルーズを予約します。この船上での予約システムは、自動的に旅行代理店に還元される仕掛けも、旅行代理店としては非常にありがたいことなのです。船上での仮予約のキャンセル率は約15%。かなりの高い確率で次回もクリスタル・クルーズに乗船するというパターン が一般的でした。

船客を送り出した旅行代理店は、帰郷した船客の満足度の高さに、クリスタル・ クルーズと仕事をする喜びを感じていたのです。

クルーズ船客にとって船上の滞在で感 動が得られ、至高を与えられたと思えば、船上での次の予約に繋がるのです。

体験価値が高くなればな ほど、船上での予約率も高くなります。

リピータービジネスの方程式は、寄港地など旅行の目的地と旅の過程や船上での滞在環境などを織りあった結果が支払った料金に見合う感動を得られたかによる満足度によるものです。つまり世間でよく言われているコストパフォーマンスと言われるものです。

この満足度が高ければ、高いほどリピーター率は高くなるのです。つまりクルーズ料金に見合ったサービスや感動を享受したと判断した結果と思われたのです。

この満足度は、試乗を経験したゲスト感動が脳裏に刻まれた指針となり,ゲストの口コミなどにより、世間に広まると確信したのです。

ゲストが新規顧客を勧誘してくれるシステムの構築も重要である。この様な環境の実現 のためには、ゲストとの接点で彼らが感じた不満点なども聞く仕掛けが構築されていなければならないのです。

不満がサービス改善のカンフル剤ともなるのです。

1 年目は、このシナリオ通りの経過をたどっているのです。

しかし、このリピーター戦略はリピーター が増えれば良いというものではないのです。

次の段階、一度試乗を経験したゲストに新たな感動を提供し、 初乗船したゲスちが次世代の家族に、「クリスタル・クルーズの船で旅行したのよ」と自慢のできるようなシステムの特染で考えなけれはならない。ゲストの満足度に 安心しているとこの事業は衰退する可能性があります。

その評価を受ける立場になれば顧客満足度は、船上での人間関係などによって大目に高く評価される傾向もあるのです。

満足とはゲスト一人一人の生き方が変化していると同じように、彼らの受ける満足感の質や程度は変化し、飽きが来やすいのです。

常に改革の気持ちを持ち続けなければならいのです。

クリ スタル・クルーズのリピーターをクリスタル・クルーズの一員として、つまり家族のように接遇できるような環境への挑戦が次のステージの重要な仕事になるのです。

 5.便宜置籍船制度と船上滞在環境の独自性

この事業の開始に当たり、便宜置籍船の仕掛けを最大限に活用する事に決めたことが、乗船客と船上での滞在環境の調和を演出する際に大きな効果を発揮したのです。

経験豊かで強力な幹部船員やヨーロッパなどのホテル部門の幹部の採用を中心とした国際労働市場からの人材の採用を可能にし、これが船上における滞在環境の高い評価に繋がったのです。

同業他社の模倣を極力避け、常にゲストや旅行商品企画の中心に置き、人間力溢れた多国籍従業員を配して、ゲストの船上滞在環境の充実度を高めることに尽力したのです。

そしてプロダクトの独自性や差別化に有効に機能し、乗船客の理想的な環境をカスタムメイドし、クリスタル・クルーズとして独自のサービススタイルが定着したのです。

船上でよりラグジュアリーなクルーズ会社を演出するためのポイントは、 社交とか人的交流の舞台にフレンドリーな環境を持ち込みながら、それを演出するスタッフをマスコミや社外向け宣伝資料に積極的に露出させる事。これを企業イメージ定着のスタンダードに仕上げたのです。

ゲストと船上体験環境の裏方スタッフとの繋がりを通して、ブランド・パーソナリ ティを更に高めることが出来たのです。

他の会社とどこかが違うという差別化する意識を常に念頭を置き、 これを宣伝面においても徹底したのです。

プランド・イメージを構築の過程では、この人との繋がりに重点を置いた宣伝を展開したのです。

船上での滞在体験を構成する乗組員が演出するソーシャルとロマンスの舞台に不可欠な娯楽の面でも、 既存社には無い仕掛けを考える事が出来た。 船上でのショーや歌手やダンサーなども、 クリスタル・クルーズの直接採用を徹底し、演出も振り付けも全て自前で、パサデナの職住一体のスタジオで仕込んだ。

スタッフに対しては、変化に対する対応、新鮮な目線と細部へのこだわりを 徹底させたのです。

「ゲストをハッピーにするには何をすればいいのか」と常に革新的な発想をするように心がけ、ライフスタイルの変化に着目できる先見力を磨かせたのです。

他よりも変わったことを先取りする勇気と先見力。


つまり積極的思考がクリスタル・クルーズ躍進の原動力となったのです。

6.人材投資と乗組員への繊細な対応

将来の発展を不動のものにするためには、造船に投資することも大事ですがが、 同時に他社にも真似が出来ない様な人材への投資が重要であったのです。

つまりハードとソフトの関係 は、この事業推進の両輪であったが、特に後者においては、多くの優秀な幹部船員や従業員を国際人材市場から採用してきた経緯があります。

その彼らに、十分に活躍してもらうために、タッチ・ポイント・マネ ージメントと権限委譲を徹底した。問題を見つけて、現場の接点で即決・解決することが重要であって、レベルの問題ではないのです。

「行動が大切だ」を徹底した。船上で働く一人ひとりのクルーはブランド価値のメッセンジャーであるという信念から乗組員の働く現場や船上 での従業員居住区などの生活環境への投資などの検証も怠らなかった。

クリスタル・クルーズの他社との違いは、 クリスタル・クルーズがクルーの事をどこよりも理解していることにあるとの自負もありました。

優良従業員(乗組) の表彰認知、従業員を対象としたクルーやアンケートや調査により改善策や意見の取りこみ、雇用契約内容の明確化と公平な評価などには力を入れていたのです。

ハッピーなクルーが、ゲストに生涯忘れえぬ思い出を創って頂く陰の演出を常に意識してきたのです。

7.ホスピタリティ事業の世界基準と日本の常識との棲み分け

当初から仕事の仕方などを巡って、東京本社と現地会社の間では多くの軋轢を生んできた。 特に「日本の日本の会社組織の在り方(日本の常識)やオーナー側の日本郵船のクルーズ客船における思い込みや先入観などの延長線上で、アメリカのマーケットを対象として事業を起こそうとすれば、その対応も大きく異なるのです。

しかも、日本郵船における事業経験と言っても、戦前の「輸送手段としての クルーズ客船事業」であり、 現在のクルーズ事業とは全く異質なもので、戦前のクルーズ客船事業の延長線上で考えることは出来なかった。

それでも、客船に対する漠然としたイメージや客船先進国の模倣を通して我々にも出来ると言う気持ちも日本側に有ったに違いないのです。時にはこの思い込みに執心しても、日本国内では通用してもより大きな国際マーケットで通用するとは限らないガラパゴス現象に陥りやすいのです。

この新規事業には、日本の客船時代のイメージで描かれている表層的な客船のイメージとは全く異なり、日本で一般的に思 われているようなクルーズ事業が客船の世界から更に発展し高級ホテルのようなホスピタリティ事業の範疇である事に気が付くには時間を要しなかったのです。

しかもその延長線上には、ラスベガスのような船上での総合エンターテイメント事業への道が描かれていたのです。

日本郵船は、船を運航するには専門家ではあるが、数年間という限られた時間で、この高級ホテルのような滞在環境と旅行者を楽しませるエンターテイメントの世界を演出する力があるとは思えなかったのです。

新造船の設計から就航までの2年間で、全く実績の無いアメリカのマーケットで、この事業のカタチを作り、 就航後はフルスイングで業績に寄与するためには、既存の業界などの経験者を中心とした即戦力集団を編成するしかないと判断した。

この即戦力集団の採用は、時に日本における運航部門の経験者との軋轢を生む事となったのです。

アメリカ的経営を核としたクルーズ客船運航のプロ集団や経験者が中心となった欧米の幹部は、ホスピ タリティ事業やクルーズ業界での世界基準の中で育ってきたのです。

日本的な雇用形態を背景とした会社文化との考え方には、簡単に埋めることの出来ない大きな違いがあったのです。

親会社と子会社の関係で言えば、この事業の意図するところでは、全く逆の立場であった。アメリカを主市場として事業を開始するには、親会社の知識は全くゼロでした。

本社としては当初は円高などの会社環境の変化もあり、 日本的な世界や仕掛けに拘った日本人船員と本社東京対アメリカ支店構想のもとでクルーズ客船事業に進出して、日本郵船の名前や在米日系事業会社などの組織網を駆使すれば、アメリカ人マー ケットも獲得できると考えたのです。

しかし、アメリカから見るとこの事業計画自体はマーケットの要請から離れて、運航会社側の一方的な独りよがりのクルーズ事業で、最も重視されるべき販売網や船客の意向とは別のところにあると思われたのです。

この事業の成功への第一歩は、「日本郵船太平洋客船会社」構想の段階で、幹部社員の一人がアメリカでの事業の現状を理解し、便宜置籍船システムの導入に踏み切った事です。

これによりこの事業で世界一を狙うスタートをきることが出来たのです。世界基準でトップを狙うための最初の関門が開かれたのです。

最も経験豊富で、マーケットの信認を得やすい欧米人幹部船員の登用により、比較的短期間に世界一の座を狙う最低限の基盤が出来たのです。

この窮状を救ったのは、本社側が、アメリカでのビジネスの実態を十分把握し、アメリカのマーケットの要請を最優先に受け入れる決断でした。

危機の際には現場主義を元に世界基準を事業推進の中心に置き、相互の信頼関係の上で、問題を解決することが出来たのです。

またサービス開始間もない時期に発生したパナマ沖での船上火災は災難であったが、 マーレン船長他、船上での国際船員の危機対応が、高く評価されることとなった。ピンチをチャンスに変える効果があったのです。

この危機対応が親会社と現地会社の信頼関係を強固な ものにしたことは間違いない。勿論、この火災は危機管理能力が業界から高く評価される ことになり、旅行代理店ネットワークやクルーズゲストにも高く評価された。 そして今後、重要になると考えたのは投資側の先見力なのです。

この事業に進出 1 年で、この業界での最高級の評価を得てしまったが、この評価を今後維持し続けることができるか否かが、 クリスタル・クルーズの中長期の戦略の命運を握っていると思っていたのです。

この維持には、その旅行代理店ネットワーク販売網との友好的な関係も重要ですが、 それ以上に常に 2 年、3 年先の乗船客のライフスタイルを見る先見力が今まで以上に 必要である事もあったのです。

クリスタル・クルーズのブランドを信ずる販売網に加え、クルーズ客層が拡大している事も心強いのです。

クリスタル・クルーズの 1 年目の実績を見るとクリスタル・ ハーモニーに初乗船したゲストの65%が「またクリスタル・クルーズの船に乗りたい」そして、94%のクリスタル・ ハーモニーのゲストが「友人などにクリスタル・クルーズ」を薦めるといっているのでした。

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